驚くべきフィリピンの病院システム【セブの病院体験】
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今年の1月に、セブで左腕上部に出来た腫瘍を切除する手術を受けました。その体験を通じて、日本とは違うフィリピン独自の病院システムの存在を知りました。今回は、セブでの病院体験とフィリピンの病院のシステムについてお話しします。
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突然できた腫瘍
私は滅多な事では病院に行きません。風邪くらいなら病院に行かなくとも自力で治せるという妙な持論があります。子供を病院に連れて行ったことはありますが、私自身は10年以上も病院のお世話にはなっていませんでした。
しかし、3年ほど前から左腕上部にコブのようなものができ始めました。最初はたいして気にもしていなかったのですが、そのコブが少しづつ大きくなり、7ミリほどの高さに盛り上がるまで成長してしまったのです。
周りから「悪性の腫瘍だったら大事だよ。病院にいくべきだよ」とご指摘を受けるようになり、さすがに丈夫なタフガイを自称していた私も気になって、覚悟を決めて病院に行くこととなりました。
知り合いの弁護士が「いいドクターを紹介してやるよ」と言ってくれました。一瞬、私の頭の中に「いいドクター = 高額」という考えがよぎったのですが、命にかかわる事態も想定されるので、ここでケチって後悔するよりは、名医にしっかり見てもらった方が賢明だと判断し、病院の門をたたきました。
いざ、病院へ
私が紹介されたのは、Chung Hua Hospital(チョンワ病院)。名前からも想像できる通り中国人が経営している病院です。私は知らなかったのですが、この病院の評判はなかなか良く、いいドクターが集まっているとの事。
私は先にアポイントを取っていたので、予定の時間の20分前に病院に到着。日本の病院だと、ホテルのフロントみたいなものがあって、その前に椅子がずらっと並んでいるイメージなのですが、そんな風景はありません。
なかなか現れないドクター
私のドクターは3Fだと事前に聞いていたので、3Fに向かいました。ドクターの名前が横に書かれていたドア見つけ、中に入ります。中央に机が置いてあり、その周りに椅子が設置してあり、すでに10人近くの患者が座っていました。
先客を見ると、みなさん身なりがいいです。サンダルを履いている人がいない!みなさん、ちゃんとしたシューズを履いてます。ちゃんと腕時計もしてます。さすが私立病院です。私はと言えば、必須アイテムのサンダルです。
その部屋の大きさは8畳ほどです。病院の廊下はクーラーが効いていないのですが、室内は効いています。中央の机にドカッと座っている女性に、ドクターとのアポイントがある旨を告げると、「先生は、まだ来ていない」との返答。
待つこと約1時間。当然アポイントの時間をすでに大幅にオーバーしています。すると「どうぞ、奥の部屋に入って!」と声がかかったのです。しかし、私よりも先に来てずっと待ってた人も大勢います。
「ここで待ってる先客の人達は?」と聞けば、「あなたはアポイントしてあるんでしょ。いいのよ!」との事。はたして、「この方たちは、あとどれぐらい待てば診察してもらえるのだろうか」と思いつつ奥の部屋のドアを開けました。
驚きの診察室
部屋に入って、ビックリ!「なんじゃぁ~こりゃぁ!」です。「ここは病院の中なのか!」と疑いたくなるような室内でした。まるで、ハリーポッターの魔法学校(ホグワーツ)の校長室です。家具はすべてアンティーク家具で統一されてました。
下の画像はイメージですが、これに近い雰囲気の診察室でした。この部屋を少しばかり狭くした感じです。窓はありませんでした。
さらに、その先生から漂う雰囲気が実にいい。まるでハリウッド映画に出てくるような年配のイケメン・ドクターです。話し方も上品で綺麗な英語です。しかもソフトにささやくようなトークです。診察よりも、その雰囲気に圧倒されっぱなしです。
私は第一声、「なんですか?この部屋は?びっくりしましたよ」とドクターに言いました。するとドクターは、「この部屋は私が買った部屋だから好きにしていいんだよ」という答えが返ってきたのですが、まったく意味が理解できません。
私はさらに突っ込んで質問。「買ったって?この部屋は病院の持ち物じゃないんですか?」と伺ったところ、「ここの病院のオーナーから、この部屋を買ったんだよ」さらに「隣の部屋のドクターは賃貸だから、壁は真っ白だよ」との事。
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オープン病院システム
その後もしばらく、診察を中断して話をしていたのですが、驚きの事実がわかったのです。フィリピンの大病院の経営は、病院内の部屋を医者にレンタルして利益を出すビジネスモデルだったのです。
これは「オープン病院スタイル」と呼ばれているフィリピン独特の病院スタイルです。これはもはや、病院のオーナーは病院経営者というよりも、不動産経営者に近いですね。病院のオーナーと医者の関係は大家と店子だったのです。
患者が来ない店子は撤退して、新たなドクター(店子)が部屋を借りて、そこで診療するのです。つまり、病院のオーナーの利益は患者数に比例するのではないのです。医者に診察する部屋を提供することによる家賃収入により、安定収入を得られるわけです。
なんだか、巨大な病院の建物が、飲み屋ばかり入っているテナントビルに見えてきました。人気のない店はすぐに撤退してしまう。人気のないドクターは家賃が払えなくなり、撤退する。フィリピンの巨大病院の実態は個人病院ばかりが入っているテナントビルだったのです。
病院内での分業化
病院内の看護婦と救急ドクター以外は、みなさん個人業者です。レントゲン技師などの放射線専門医や臨床病理医なども個人業者です。患者自身が施設内の放射線専門医に会い検査を受けて別に金を支払って病状におけるデータを買うというスタイルなのです。
この検査データは患者個人の所有物であり、他の医師にかかった時でも自由に使用できます。これはレントゲンやCTスキャン、NMRなど他の検査でも同じで、放射線専門医は撮影を行い診断コメントをつけて、データを患者に渡すというスタイルです。
入院施設も、一泊いくらで患者に部屋を提供するというホテルに感覚が近いものがあります。日本のように専門科などによって病棟や決まった部屋があるわけではありません。患者の経済能力に応じて部屋のタイプが変わるだけです。
いよいよ、手術開始
イケメン・ドクターの診察は、問診と触診のみでした。レントゲン検査やCT検査や超音波検査などもありません。イケメン・ドクターから「大丈夫ですよ。悪性の腫瘍ではありませんよ」と自信に満ちた表情で言われると、ついつい信じてしまった私。
なんと、手術してくれたのはイケメン・ドクターの奥様でした。さぞや、チャーミングな奥様かと期待していたのですが、ふっくらした気のいい感じの女性でした。奥様が使用している部屋は病院内のレンタル部屋らしく、かなり素っ気無い部屋でした。
しかし、自宅からCDプレイヤーを持参してくれ、クラッシック音楽を流しながら手術をしてくれる優しい心遣いです。なかなか、あざやかな手さばきでした。わずか30分ほどで手術は終了。
( ↑ 名誉の?傷跡)
治療費の支払い
入院なしの診察だけであれば、直接ドクターもしくは、ドクターの秘書に支払います。入院などの場合は病院での支払は伝票操作などで、支払窓口で一括して支払う事が出来るようになっています。
明細内容は、病室宿泊料金、看護料金、各検査の料金、手術施設使用料、入院時に応援診察を依頼した医師の料金等が独立して計算されています。
ちなみに、私が支払ったのは、イケメン・ドクターには診察料として400ペソだけでした。奥様のドクターには、当初は1万3千ペソという提示額だったのですが、なんと!9,000ペソ(約2万3千円)にディスカウントです。
ディスカウントの秘訣
実はこのディスカウントの裏には、私の秘策がありまして、イケメン・ドクターとの会話で「冬になると、たまに日本にバケーションに行く」さらには、「日本酒が美味しかった」という情報をゲットしていたのです。
手術が始まる前に、私が所有するコレクションの中でもオシャレなデザインの日本酒をプレゼントしていたのです。奥様もイケる口らしく、大喜びでした。気は心です。私の根回し作戦が、みごとに功を奏しました。
最後に
今回はフィリピンにおける、日本とは異なる病院そのものの経営スタイルに重点を置いて記事にしてみました。私の術後の経過としましては、多少の傷跡は残りました。しかし、術後はなんら痛みもなく、今では順調に生活を送っています。
保険制度がないフィリピンの病院で診察を受ける際は、最初に支払い能力を問われます。支払い能力がない患者だと判断されると門前払いです。私は紹介だったこともありますが、私が日本人であったという部分が大きかったと思います。
フィリピンでは、日本人はみんな金持ちだという神話が定着しています。通常であれば、診察を受ける前に支払い能力の提示としてクレジットカードを見せるなり、職業を証明する必要があります。私は決してお金持ちではないのですが、実感として日本人である事に感謝しました。
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この記事を書いた人
日本の大学を卒業後に、フランス、イギリス、アメリカを渡り歩き、気がつけばセブで生活をしている50代半ばのオッサンです。酒とビリヤードを愛する男。セブでは、日本人よりフィリピン人のほうが友達は多いです。ちょい悪オヤジになりきれない、か弱いオヤジ。今までの経験を通して、私らしい情報発信ができれば幸いです。