【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル4~国民生活センターに寄せられた留学業界のトラブル

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『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル』シリーズの第4弾です。3回に渡って、留学エージェントの運営方法に焦点を当てて現在の留学エージェントの問題点を探りました。今回は、国民生活センターに寄せられた相談・苦情から、倒産以外の留学エージェントのトラブルを紹介します。

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前回の記事『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル3~留学業界には法規制がない!!兵庫弁護士会が意見書を提出』では、留学業界には今のところ法規制がないために、トラブルが多発しやすい傾向にあることを書きました。

『【弁護士に聞く】留学エージェントのトラブル2~留学エージェント倒産の実例~』では、トラブルの中でも、「留学エージェントの倒産」という最悪のケースの実例を紹介しましたが、留学エージェントに関するトラブルは他にもあります。

留学エージェントのサービスに関する苦情・相談は年々増加しており、それを受けて国民生活センターは2005年に報告書としてまとめ、注意を呼び掛けています。今回は、その報告書の内容を紹介します。

増え続ける留学エージェントの苦情・相談

報告書によると、留学エージェントに関する相談は、1995年度から2004年までに3,436件寄せられています。前年度件数を下回った年もあったものの、全体としては年々増加傾向にあります。

相談の内容は、解約・返金に関するものが最も多く7~9割を占めています。他には、強引な勧誘等の販売方法に関する苦情、提供されるべきサービスが提供されないといったサービスの質に関する苦情が1~2割を占めています。

実際に国民生活センターに寄せられた相談・苦情のいくつかを、報告書より抜粋して紹介します。

不適切な勧誘行為

① 看護師の資格を活かした海外留学を望んでいて、資料請求をした。事業者から説明を受けた時に英語力に不安があることを伝えたが、大丈夫と言われた。希望の看護 コースは制限があり早く申し込むように言われ契約した。その後、語学学校のテスト用紙を返送したら自分のレベルでは受け入れできないと言われ、解約を申し出たところ、申込金は返金できないと言う。納得できない。(40歳代 女性 給与生活者)

② インターネットで資料請求したところ、事業者に電話で呼び出された。「ワーキングホリデービザが必要だが2名の空きしかない、空きがなければ受け付けない、急いだ方が良い」と勧められ、海外体験留学コースをクレジットの一括払いで契約をした。クレジットの引落し後、ビザが取れなかったことがわかったが、解約の場合は企画料として15万円が差し引かれるという。全額返金してほしい。(20歳代 女性 給与生活者)

契約書面の不交付

③ 留学の紹介本に出ていた事業者でカウンセリングを受け、留学斡旋手続の契約をし、申込金を支払ったが、申込書、契約書は渡されていない。料金について説明を求めたが回答しないので解約したいといったら、申込金は返金しないと申込書に書いてあると言われた。申込金を返してもらいたい。(20歳代 女性 無職)

④ 雑誌広告では無料カウンセリングを受けられるとあったので、ホームページから申込んだ。その後事業者から電話があり、無料カウンセリングを受け、留学先を決めた。その時は書面も交付されず、解約料の説明もなかった。契約の2日後に取消しを申し出たら年会費6万8千円の30%を支払えといわれた。支払わなければならないか。(30歳代 女性 給与生活者)

サービスの質に問題がある

⑤ 来年の1月から留学することを希望し、外国留学を斡旋する事業者に相談したところ、10月中に手続きすれば間に合うというので9月に契約し、入会金10万円を支払った。学校の選択及び手続きを依頼したが、1ヶ月間何の連絡も情報提供もなかった。11月になり学校の紹介を催促したが、2週間たっても連絡がない。約束が守られないので契約はなかったことにしたい。返金してほしい。(20歳代 女性 給与生活者)

⑥ 半年程前、インターネットで資料請求した代理店を通じて、海外への留学契約をし、3ヶ月前渡航した。当初、語学の修得具合によって途中でITコースへ編入できる予定だった。編入手続きを申請したところ、今年度は定員割れで開講していないことが判明。代理店は知らなかったと非を認めたが、解約には応じない。渡航目的が達成できないので解約、返金してほしい。(20歳代 女性 学生)

高額な解約料

⑦ 事業者が刊行する雑誌のHPに希望を書いたら電話があった。美容関連の仕事をしながら語学留学をしたいと述べたらオーストラリアなら希望がかなうと勧められた。 まず申込みをと言われてオーストラリアで働きながら学ぶ語学留学1年間コースを申込み、15万円支払った。ところがその後は連絡が途絶え、1ヶ月半後に出発日を決めよとの電話があった。必要な準備や現地での生活に関する説明がなく事業者が信用できないため解約を求めたところ、既払金の7割を損料として請求された。(20歳代 女性 給与生活者)

⑧ 4月に出発する留学を11月に契約。契約から7日後に都合が悪くなり、解約することにした。契約書を読むと契約金の2割の負担金と書いてあった。契約金額は108万円なので損料2割は高額である。納得できない。(20歳代 女性 学生)

倒産

⑨ 雑誌で見て、語学留学斡旋を依頼した。費用を全額支払った後に入学許可証が届くはずだったが、なかなか届かなかった。9月から留学するつもりであったので、準備等のため勤務先に辞表を既に出しているが、事業者倒産の通知が届いた。返金してもらえないか。(20歳代 女性 給与生活者)

⑩ 娘のイギリス留学の斡旋を事業者に申し込み、現地学費分を含め一括で支払い、4月~12月の9ヶ月間の予定で留学中である。すると事業者から手紙で「お預りしていた学費の一部が学校へ未払いの状態で、倒産となった。今後については再度連絡する。」と通知があった。現地に確認すると3ヶ月分の学費しか納入されていなかった。 既に事業者とは連絡がとれない。どうしたらよいか。(40歳代 女性 家事従事者)

留学業界の現状・問題点

悪徳業者としか思えないような留学エージェントの実態が次々に浮かんできます。もちろんすべての留学エージェントがこのようなことを行っている訳ではないでしょうが、潜在的にトラブルが発生しやすい業界であることは確かなようです。

法規制がない

前回の記事でも言及しましたが、留学業界に法規制がないことがトラブルが発生しやすい原因の一つとなっています。「旅行業」の資格を持った留学エージェントでも、海外の学校の斡旋・手続き代行といった留学エージェントのメインのサービスは「旅行業」に該当しないため、旅行業法の適用は受けません。

不当な解約料

解約料に関しては、消費者契約法第9条により、事業者に生じる平均的な損害の額を超える解約料は無効と定められていますが、そもそも、留学エージェントが「平均的な損害」と主張し定めている解約料自体が、実際には一般的な「平均的な損害」を超えている場合もあると考えられます。

事例④や⑧などは、契約から数日後に学校手配等の手続きが大きく進んでいるとは考えにくく、依頼者の解約による留学エージェントの実質的な損害は皆無に等しいと考えられます。それにも関わらず、「規約に記載があるから」という理由で、解約料2割・3割を請求されています。

留学エージェントの知識・確認不足

留学エージェントの知識・確認不足によるサービスの質の低下も否めません。

事例①は、強引な勧誘をして依頼者の英語力が不確かなのにも関わらず申し込みさせたと言えますが、同時に、該当のコースを受講するには実際にどれくらいの英語力が必要なのか留学エージェントが十分に理解していなかった、きちんと確認していなかったとも言えます。事例⑥に至っては、完全に留学エージェントの知識・確認不足です。

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留学エージェントへ望むこと

国民生活センターは、寄せられた相談事例から、下記の4つのことを提言しています。

  1. 不適切な勧誘をしないこと
  2. 契約締結前に契約内容をきちんと説明すること
  3. 解約料については、適切な額を設定すること
  4. サービスの質の向上に努めること

留学エージェント利用者へのアドバイス

こうした現状を受けて、国民生活センターは留学エージェント利用者へ下記の5つのアドバイスを提言しています。

1.自分が受けたいサービスを具体的にすること

「留学等斡旋サービス」を利用する場合、漠然とサービスを受けたいというだけでは、事業者任せの契約内容となってしまう。自分が必要としているサービス、提供してほしい サービスは何かということを具体化しておくことが必要である。

2.契約する前に、複数の事業者を比較検討すること

安易な契約は避け、サービス内容、料金体系などについて複数の事業者を比較検討した ほうがよい。

3.契約に当たっては、事前に契約書(約款)を必ず読むこと

契約に当たっては、事前に契約書を入手し、必ず読むこと。そして契約内容を理解したうえで契約すること。契約内容に含まれるサービスは何か、料金体系はどうなっているのか、解約料などをきちんとチェックすること。

4.契約はよく考えて慎重に ― クーリング・オフの適用はない ―

「留学等斡旋サービス」はクーリング・オフの適用がないので、原則、契約後の無条件解除はできない。契約をした場合には、消費者にも責任が生じる。「とりあえず契約をしてから考える」ということは、後日、解約トラブル等に発展することもある。契約をする前に、本当に必要なのか、支払いは大丈夫か等、じっくり考えよう。契約を急がせる事業者などもいるが、冷静に対応すること。

5.消費生活センター等に相談すること

トラブルになったら、最寄りの消費生活センター等に相談すること。

筆者からは、ここに加えて…

6.自分で留学の手配をすること

というアドバイスに加えたいと思います。自分で手配をすることで、留学の目的が明確になり、留学のことを自分で理解しながら準備を進められるので、留学生活をスムーズに、そして積極的に送ることができます。

日本学生支援機構からも、次のようなアドバイスが寄せられています。

海外の制度について基礎知識を持つこと 留学斡旋サービスの内容を正しく判断するためには、実際の制度がどうなっているのか、当機構などの公的な機関に一度確認してみることです。このように自主的な留学準備にあたることが、海外の語学学校や教育機関で勉強する際に「自分で考え、判断し、行動する」能力を身につけることにもつながっていくと思われます。私共は留学準備・手続きを自分で進めることを基本として留学情報提供サービスを行っています。このような考え方を念頭に、第三者によらない正しい公的情報を利用しつつ手続きしていただきたいと思います。<日本学生支援機構より>

留学業界全体がクリーンになり、誰もが安心して留学を考えることができるようになる日を願うばかりです。

<参考文献>

独立行政法人国民生活センター『増加する「留学等斡旋サービス」トラブル』

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この記事を書いた人

CooL
CooL

訪問国数44ヶ国、現在スペイン在住。留学・語学学習・海外生活の知識が深まる情報を海外からお届け。

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