インドネシアで本場の染色技術を学ぶ!--トビタテ!留学経験者インタビュー Vol.1 前編
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「アジアの芸術と自然観を学ぶ」という目標のもと、トビタテ!留学JAPAN 日本代表としてインドネシアへ染色技術を学びにトビタった山本愛子さん。この留学でしか得られなかった、作品作りにおける新たな発見とはいったい何だったのでしょうか?前編では、渡航前の準備やインドネシアでの生活など、留学の全体像についてお伝えしたいと思います。現地の工房での具体的な学びや発見については、後編の記事をご覧ください。
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今回インタビューしたトビタテ生
(↑インドネシア滞在報告会の様子 BankARTstudioNYK Pubスペースにて)
山本愛子さん
山本さんは現在、東京藝術大学の修士2年に在学されています。トビタテ※のプログラムでは、インドネシアのジャワ島へ行き、現地の工房で伝統的な染色技術である「バティック」を学ばれました。
※トビタテ=トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム。官民協働の留学支援制度で、返済不要の奨学金が給付される。
山本さんはなぜインドネシアを選んだのか、そこで何を学び、何を感じたのか…。気になることがたくさんありますよね。では早速、インタビューの内容に移ろうと思います!
インドネシアへトビタつまでの経緯
ーー トビタテ!を目指そうと思ったきっかけは何ですか?
もともと大学ではなく、染物の工房に行って勉強したいと思っていました。そこでトビタテの募集要項を見ると、大学などの機関を通さなくても自分で自由に留学先を選べると書いてありました。トビタテ以外でそういうのは見たことなかったので、いいなあって思ってトビタテに応募することにしました。
ーー トビタテの選考を突破するためのコツは何だと思いますか?
英語が喋れる必要はないと思います。私もそのとき喋れなかったし。選考基準はやはり熱意と説得力。自分がやりたいことをいかにうまく伝えて、熱意をもって相手を魅了するかが一番大事で、TOEICのスコアとかどこどこ大学だからとか、肩書や資格はまったく見られないですね。気持ちが大事。
ーー 現地の工房で染色を学んだと伺ったのですが、大学で染物を学ぶのではなく、直接工房に行こうと思ったのはなぜですか?
最初調べたんですけど、インドネシアの美大って夕方4時に閉まったりとか、先生が結構自由で、簡単に休講になったりとかするらしいんですよ。あと、染物の中には天然染料と化学染料というものがあるんですけど、大学では化学染料しか扱っていないことが多いんです。
私は天然染料がやりたかったので、大学じゃあできないなあって。で、やっぱり工房でやるのが一番いいかなって思いました。
ーー でも、インドネシアにも工房はたくさんありますよね。その中でどうやって行く工房を選んだのですか?
実は、最初から工房と直接やりとりをしていたわけではないんです。私の出身地である横浜にアートセンターがあるんですけど、そこがインドネシアとかアジアと連携を組んでいたので、そこを介してまず向こうのアートスペースに滞在させてもらいました。
工房も何百もあって、日本から遠隔だと一個に絞れないから、バティックの工房を調査するための長期的な拠点という位置付けで、そこを受け入れ先機関にしました。
ーー 工房探しも大変だったのですね。ところで、他の地域でも染物は勉強できると思うのですが、なぜインドネシアを留学先として選んだのですか?
染物のなかにもいろんな種類があって、ろうけつ染めだったり絞り染めだったり。私はろうけつ染めを勉強したくて、その代表格がインドネシア、ジャワ島のバティックというものなんです。現地に行けば高い技術のものにも触れられるかなと思って、それでインドネシアにしました。
インドネシア留学の事前準備
ーー 渡航前に様々な手続きが必要だと思うのですが、インドネシアでのビザはどのようなものでしたか?また、取得のための手続きはどうでしたか?
私が行っていた頃は観光用だと2か月、大学に行くためなら1年でした。でも私は大学ではなかったので、また別に社会文化ビザという5か月のものを取りました。日本の大使館で自分ひとりでやったんですけど、結局なんかダメで、途中シンガポールに出たりしました(笑)。
ーー えええ、わざわざシンガポールに!?
はい。私の計画では、最初5か月終わってビザの延長手続きをして、結果ずっとインドネシアにいるつもりだったんですけど、途中2か月目くらいで「だめだよ」って言われて。そのタイミングで一度シンガポールに出て、また2か月したら出て、また2か月で出て…っていうのを2か月ごとにやってました。
逆にビザの延長手続きをするほうがお金かかるんじゃないかと思って、観光も兼ねて行ってました。ほかの日本人も、みんなビザで苦戦してると思います。
ーー それは大変でしたね…。ところで、インドネシアに行く前に、治安の面での不安はありませんでしたか?私自身は留学に行く前に行き先の治安をすごく気にしていたのですが。
頑張ってネットで調べたり、大使館に行って話を聞いたりしました。また、保険会社でインドネシアの保険制度について聞いてリサーチもしました。
あとは、トビタテでの留学前に 一度自費で3週間くらい渡航してるんですよ。やはり最初は怖くて、本当に怖かったり体質が合わなかったりしたら辞退しようかなあとも考えていたんですよね。やはり親も心配しますし、親に反対されてまで行きたいとは思わなかったので、一度行ってみようという感じでしたね。
ーー 最終的には留学に踏み切ったわけですよね。それは、一度行ってみて大丈夫だと判断できたからなのですか?
はい、すごく安全だなと思いましたね。特に私が暮らした町は治安も良かったので、大丈夫だと思いました。
ーー そうなんですね。今、留学を終えて振り返ってみて、準備の段階でこうしておけばよかったなあと思うことって何かありますか?
…インドネシア語ですかね。私の場合は美術だったので、言葉がなくても目で見てできるから何とかなっただけで、本当にもっとやっておくべきでした。結局、住む場所とか工房とかは現地に行ってみないと分からないので、留学前から調べていてもあまり意味はなくて。それよりその時間に語学をやっておけばよかったなあって今は思います。
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ジャワ島の田舎町での暮らし
ーー インドネシアでは通常何語を話すのですか?
場所によっては英語でも通じますが、基本的にインドネシア語ですね。
ーー …コミュニケーションは取れたのですか!?
コミュニケーションは、若い人は英語が喋れるので、基本は片言の英語で、ちょっとずつインドネシア語を覚えていって、最後は両方という形でした。ミックスですね(笑)。
ーー インドネシア語を学ぶために何か特別なこと、例えば語学学校に通ったりとかはしましたか?
全くですね。現地の友達とインドネシア語で毎日喋っていただけです。フォーマルなインドネシア語と日常会話のインドネシア語が結構違うらしいんですけど、日常会話重視で、毎日友達と喋ってればいいかなって(笑)。今でも文法とかおかしいと思いますけど、最低限が伝わればいいかなという感じです。
ーー すごいですね~!着いて最初のほうとか、工房で職人さんに教わるときに言語の壁はありませんでしたか?
最初は英語も全然喋れない状態で行ったので、現地にいる日本人留学生の同世代の子とかに翻訳を手伝ってもらったりしました。
ーー ということは、他にも日本人が同じ工房にいたんですか?
工房にはいなかったんですけど、レストランで偶然日本人を見かけたんです!そこで「通訳できませんか?」って頼んだりとかして。あとは、工房に日本語を学んでいるインドネシア人が何人かいたんですよ。その中で一人、日本語を学んでいるインドネシア人がいて、その人はジャワ語を日本語で教えてくれたから、いい勉強になりました。
ーー すごい偶然の出会いですね…!言語のほかに、日常生活で困ったことは何かありましたか?
お風呂ですね。湯船がなくて基本的にお湯も出ません。水を溜めておける水桶で、そこからすくって使います。だからまずお湯が恋しくて、やっぱりお風呂入りたいなーって思ってました。
あとは結構停電もありました。誕生日にケーキを持ってきてもらって、電気が消えてたから、サプライズかな?って思ったらただの停電でした(笑)。
ーー それはどう喜んでいいのか、反応に困ってしまいそうですね(笑)。
トビタテ!のプログラムならではの経験
ーー トビタテを通じて成長したこと、トビタテだからこそできた経験はありますか?
自由に好きにやらせてくれたところが良かったですね。大学を通じたりすると、多少カリキュラムなどの面で制約が掛かってしまいますよね。一方、トビタテからやるように言われているものって、毎月のレポートと事前事後研修くらいなんです。
それらはモチベーションにはなるけど、強制感はなく、そのシステムが良かったですね。トビタテのこのシステムだったからこそ、自由にやらせてもらえたし、自分にしかできない留学になったかなって思います。
ーー なるほど。他には何かありましたか?
トビタテ生の横のつながり、ネットワークがすごく強くて、そこは他の留学制度にないんじゃないかなって思いますね。SNSもみんなすごく活用するので、情報に困ることはまずなくて、自分が困ったときでも誰かしらそのアンサーをくれるのもすごく心強いですね。
あとは現地で他のトビタテ生に会うことができて、支えになりました。シンガポールに行ったときも、シンガポールに留学していた友達に相談して、シンガポールを案内してもらったりしました。
ーー 確かに、他の留学プログラムではできない経験ですよね。たくさんの人と出会って刺激をもらえるのはすごく魅力的だと思います。
インタビュー前編を振り返って
住環境の話、ビザ手続きの話など、インドネシアならではのエピソードがたくさんありましたね!実際に行って経験した人しかわからない、貴重なお話ばかりでした。このような環境の中で、ただ生活するだけではなく、染色も学んでいたとなると、それを両立させるのは大変だったに違いありません。
この続きの後編では、工房でバティックを学んだ時の経験、さらに現地でのある人との出会いについてお伝えします。そちらも是非ご覧ください!
インタビュアー
山本和香奈(やまもとわかな)/ 早稲田大学3年 / アブログインターン生
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