フィンランド・台湾を参考に、日本を「愛」のある国に!ーートビタテ!留学経験者インタビュー Vol.2 後編
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前編では東京の大学に通う女子大生が、いかにしてトビタテ!JAPAN日本代表としてフィンランドと台湾という2ヶ国を留学先として選んだのかをお伝えしました。後編となる今回は、青木さんが留学テーマを達成するために経験した大きな困難と、その困難を打開したプロセスを紹介していきたいと思います。
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前編はこちら
・なぜフィンランドと台湾の2ヶ国へ留学!?ーートビタテ!留学経験者インタビュー Vol.2 前編
今回インタビューしたトビタテ生
青木優さん
フィンランドと台湾に渡り、女性の働き方や子育て環境などの社会システムをテーマに留学したトビタテ生。現在はお茶の水女子大学生活科学部4年生です。
※トビタテ=トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム。官民協働の留学支援制度で、返済不要の奨学金が給付される。
女性のキャリア形成という軸
ーー では、留学テーマに入っていきます。青木さんはどのようなテーマで留学されたのですか?
トビタテに応募した段階では、女子学生がもつ女性のキャリア形成に対する意識は日本と海外で大きく違うのではと考え、その違いを少しでも埋める方法を見出すことを留学のテーマにしました。
ーー キャリア形成の意識が違うというのは具体的にどういうことですか?
そうですね、例えば、日本の女子学生って自分が仕事をすることと結婚することが全く別物と捉えているんですよね。就職とか仕事は今のことで、結婚はずっと先のこと、夢物語みたいな。
ーー なるほど!
対して、フィンランドの学生は結婚と仕事をあくまで一つのものとして考えている学生が多いです。
ーー なるほど...留学先ではどのようにしてこのことを調べたんですか?
フィンランドと日本の両方でアンケートを取ったんです。アンケートは、①どういう仕事に就きたいですか?②結婚して出産したい気持ちはありますか?③出産後も仕事を続ける自分の姿をイメージできますか?の3つの質問で構成しました。
ーーなかなか難しい質問ですね。
そうなんです。ただ、フィンランドの女子学生はすべての質問にすんなりと答えるんです。逆に日本はというと、3つ目の回答が全然出てこなかったですね。
これは日本の女子学生が「仕事」「結婚」「出産」を一緒に描くことができないから不安になるんです。例えば、就職活動をするにあたって、自分が本当にやりたい仕事や会社を見つけることはできても、そこの環境や福利厚生、出産後の復帰率とかそういうことばかりに気がとられるんです。
ーー たしかにそうですよね。
結果的に、自分が就職したいところがなくなったり、やりたい仕事ができなくなってくるんですよね。
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焦り⇒悩み⇒そして2つのターニングポイント
ーー ここまでを聞いていると、留学はかなり順調そうですよね。
それが、そうでもないんですよね。3、4人にインタビューしたのですが、このままインタビューを続けても何も得られないのでは、と感じるようになったんです。
ーー どうしてですか?
これは、自分の準備不足でもあるんですけど、フィンランドの人たちがあまりにも不安がなかったので、日本の学生と比較しても何も得られないのではないかと感じるようになったんです。根本的に制度が違うことで生まれる意識の違いだったので、留学をしなくても分かるようなことばかりでした。
ーー ネットとかで調べても分かることですね?
そうです。しかも、フィンランドにいられる時間が4か月しかなかったので、だんだん焦ってきたんです。
一時期、調査のためにフィンランド在住の日本人を探していたこともありました。そうすれば、答えが分かると思ったんですよね。
ーー 日本人の方には会えたんですか?
会えました!会えたんですけど...。
ーー 会えたんですけど?
結果的にインタビューもできたんです。しかし、その方は私に「私はフィンランドに長く住んでいるから、答えを教えるのは簡単だけど、それはあなたの求めるものじゃないのでは?」と言われて、思い直しました。答えを聞くだけなら日本から電話でもできますから。留学期間が短いことに焦り、何かしらの結果を残さないとと必死だったんです。
ーー では、どうやってこの状況を打開したんですか?
日本人の方にアドバイスを頂いた時、自分の力でInputすることの大事さに気づきました。もっと本を読もう、社会に出てみようと思えたんです。人に聞くときも答えを求めない聞き方をするように心がけました。
ーー すごく大きなターニングポイントだったんですね!
はい!でも実はもう一つ大きなポイントがあります。実は留学当初は、ブログとかSNSで積極的に情報発信していたんですよ。
ーー いいことじゃないですか。
けど、これも結果を残さなければという焦りから始めたももだったんです。Facebookなどのリアクションがあると、他の人に見てもらえてるな、という感じで。ただ、フィールドワークが滞ると、ブログやSNSの更新がないからリアクションも当然ない。余計に焦りが募っていきました。
ーー 焦りってこんなにも人を苦しめるものなのですね...。
はい。ただ、そんなときフィンランドで仲良くしていた日本人の友達にすごく励まされました。その友達は私に質問をぶつけてきたんです。
「優ちゃんは本当に何もしていないのか、ちゃんと何かをしているけれどもSNSなどで発信していないから何もしていない気になっているのか、どっち?」
その時、ハッとしたのは忘れられません。その子の言葉は私を苦しみから解き放ってくれるものでした。そして、どうせならこの際SNSとかそういう類のものは一切シャットアウトしようと決めました。
ーー いっさいですか!?
そうなんです(笑)。すべてをシャットアウトできるのは留学生活でしかできない挑戦だから、やってみようと。
ーー 大変な挑戦ですね!
人にどう思われるかは大事ではない。何かを知るためには自分で勉強することが大事だと分かって、2か月半も彷徨っていた長いトンネルを抜けました。
「平等国家ではなく尊重国家」という気づき
ーー 社会に出てみようと考えた結果、変化はありましたか?
インタビューで躓いていた時期にもう一度考えました。そして、私は「なぜフィンランドの学生が日本の学生と違うか」ではなく、「なぜフィンランドの学生はこんなにも不安がないのか」という根本のところにもっとディープダイブしようと決めました。
フィンランドの学生は「お母さんもそうだったから」「友達もそうだから」「誰でも私のことをわかってくれるから」と答えました。そのとき、私はフィンランドは平等国家ではなく、誰もが知らないうちにお互いを支えあっている「尊重国家」なんだなと気づきました。この気づきはとても大きなものでした。
ーー どうしてフィンランドは尊重国家が成り立っているんですか?
フィンランドが尊重国家になっている理由よりまずは「日本がなぜ尊重国家になりえないか」なんですが、日本の文化自体が原因だと思っています。
ーー 迷惑をかけないようにするという風潮があるのは事実ですよね。
ええ。ただ、フィンランドでは助けを求めるのは当たり前、第三者の誰かが守ってくれている安心感があるんです。だから尊重国家が成り立っているんだと思います。
ーー 支え合うって本当に大事ですよね。
そうなんです。尊重国家ということに気づいたときに、人が支え合うことはこんなに素晴らしいものなのだと気づき、女性を理解してくれる第三者がいるといかに生活が豊かなものになるかと考えました。
その時に、私が本当にやりたかったことは「制度を整えて自分を含め女性が活躍する場を作ること」ではなく、「母親などの身近な人に余裕と愛をいかに与えられるか」のだと気づいたんです。
ーー なるほど...!
カッコいいことが好きで、「留学先と日本を比較してこれからの日本に役立ちます!」とか言って留学したし、「愛」とかは一番最初に消してたワードだったのに、ここにきて一番重要なワードになったんです。
ーー 台湾でもやはり「愛」のある社会は実現されていたんですか?
まさにそうなんです。制度とかはまだまだ整っていないけれども、人と人とのつながりの深さはすごかったです。実際に台湾で生きていくのは大変そうだけど、みんないい顔をしていました。
フィンランドで尊重国家に気づき、台湾で社会のつながりを見ました。この社会のつながりを日本でも実現したいと確信できたことがとても大きな価値です。
ーー これからのプランなど教えていただいてもよろしいですか?
既存の枠組みにとらわれず、自分が本当に作りたい社会づくりに挑戦することに決めました。やり方はまだはっきり決まってはいないけど、社会のつながりだけは忘れないように常に意識してそれを生み出していきたいと思います。
編集部コメント
留学前と留学後で自分を大きく変えた青木さん。留学中に困難にぶつかったとき、すぐに他の人に答えを求めることは必ずしも良いとは限りません。もちろん相談をすることは大事ですが、「答えを求めない聞き方」を実践することも、留学生活を成功に導くカギなのではないでしょうか。そして、自ら社会に出ていくことができれば、大きく成長できること間違いなしです。
インタビュアー
Sai Takao/早稲田大学国際教養学部3年/アブログインターン生
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