【EU離脱】Brexit問題の中、英国に暮らす日本人の心境
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2016年6月23日に行われた国民投票で、EUからの離脱交渉に入ることを決定した英国。ここでは、そんな英国に移住を予定している日本人の一人として、私の身のまわりと今後の展望についてコラムという形でまとめました。
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「そんな国に移民したいのか?」
英国がEUを離脱する日が来るとは、そしてまさかそれが自分が移民ビザの申請をした同月に起ころうとは、全く予想していませんでした。
「海外旅行が安くできる!」とか「経済危機になって就活が大変になる…」とか、日本国内にも一喜一憂している人が多くいることでしょう。それほど多くないケースだとは思いますが、中には私のように英国への移民を予定しているために、今後の人生に関わる重大な影響が出ている人もいるのです。
私が3年半お付き合いの末結婚し、旦那のいる英国(イングランド)に移民しようと配偶者ビザを申請したのが今月の上旬。この悲報(少なくとも私のまわりでは)が入ってきたのは、その同月の日本時間24日のことでした。
英国民の間でも「まさかそんな大事になろうとは想像していなかった」というのが正直なところのようで、ロンドンの友人たちや地方都市ブリストルにいる旦那からも「イギリスは今異様な雰囲気になっている」との連絡がありました。
イギリスで私の渡英を待っている旦那も、仕事の合間に慌てて電話をしてきました。「自分の国がこんな差別主義な国だとは思わなかった。英国民としてとても恥ずかしく思う。これは英国にとって悲しい時代だ。自分は妻として日本人(=移民)を持っているのに、君だって、そんな差別をするような国には移民したいとは思わないだろう。」私は、ここで、事態の深刻さを実感しました。
「移民」と「難民」
英国に移民を予定している一人として、正直、先行きの見えない不安と、悲しい気持ちでいっぱいです。離脱の票を投じた52%の英国民は、「移民」と「難民」の区別がつかないのでしょうか。
「移民は仕事もせず、我々の税金からなる公的資金に手を付け、保険システムを崩壊させている」というのが離脱派の主張。確かに、そのような人が一部にはいることは事実だと思います。でも、大多数の移民は、「きちんと税金を払い」「理由があってイギリスで生活している」のです。「移民」=「難民」ではありません。そこは、きっちりと線を引かなくてはならないところです。
EU圏外以外からの移民は全員、移民ビザ申請時に、英国民であれば通常完全無料で受けられるはずのNHS(英国の国民保険)料金をまとめて支払っています。もちろん私もその一人。日本の会社から受注した仕事をしていますが、イギリスに引っ越した際には居住国であるイギリスにしっかりと納税をします。英国政府に税金をいくら支払っていようと、移民の場合はNHSは無料にはなりません。
英国に納税もし、英国人の仕事も奪わず、それなのにひとくくりに『移民』とまとめられてしまう。「私」がどのような人間で、どのような理由から英国に住み、英国にどのような貢献をしていようと、一般市民にはそんなことわかりはしないのです。そう思うと、とても悲しくなります。
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グローバル化の社会に逆行?
今回の投票では、グローバル社会のまっただ中にいる若者ほど「残存」を求め、高齢者ほど「離脱」を希望した、という結果が出ています。これまた非常に残念なことです。
老い先短い高齢者が、自分の行く病院がいっぱいだ、公的保障のサービスの質が下がった、そういう短期的な「マイナス面」に気を取られ、「EU加盟国の数十の国々に自由に渡航し、留学し、就職し、結婚する」という素晴らしい特権を、未来の若者に享受させることができなくなってしまうかもしれないのです。
実際にはそこまで端的な影響は出ないのではと言われていますが、この先の交渉、EU加盟国の姿勢などで、予想できないマイナス面が多数出てくるであろうことは明らかです。
移民にとって生活しにくい国になってしまうのか?
このような英国民の意思決定に関して、一移民として、「良い気はしない」というのが正直なところです。
「国民の52%の人があなたの存在をよく思っていないんですよ?そんな国に行きたいですか?」と言われたら、本当にそんな国に移民したいのか、考えこんでしまいます。でも、もう旦那を変えることも、数年の歳月と何十万円ものお金のかかったビザを放棄することも、私にはできません。
私には、自分の旦那をはじめとする多数の英国民には「良識」と「将来への希望」がある、と信じることしかできません。この先、差別や冷たい目で見られたりという経験もきっとあるでしょう。でも、私と同世代の未来ある若者は、英国のこのような姿をそのままにせず、自分達そして英国に住む人々の暮らしをより良くしようとする、向上心があるはずです。そして、英国には、私と同じ気持ちでいる移民たちがたくさんいるはずです。
まとめ
この先波乱万丈が待ち受けていそうな英国生活。今回は英国への移民を予定している私に影響が出てしまう結果となった「英国EU離脱」の国民投票について、個人的な見解をお伝えするコラムを書かせていただきました。また、この先の状況なども随時発信していければと思います。
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この記事を書いた人
Tea drinker, painter, traveler, skier and yogi. アメリカ、カナダ、デンマークなどに居住。現在は翻訳の仕事をしながら、イギリス南西部の田舎町でパートナーとその家族との5人+1匹暮らし。