日本人がアメリカで漫才?同僚に「私の英語のせい」で仕事ができないと言われた日
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Improvisation(Improv)を知っていますか?アメリカの即興コントです。日本人でImprovをやっている人はほとんどいません。今回は、なぜ私はImprovをやり始めたのか、そのきっかけについてご紹介します。在米経験が長く自分の英語力に壁を感じ始めた方には特にオススメします。
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私は「Improvisation」と呼ばれる米国の即興コントをやり始めて4年になります。今回は、私がImprov(一般的に略してこう呼ばれます)をやり始めたきっかけをお話しましょう。
私の英語のせい?でプロジェクトがストップ
数年前、私が勤める日系会社で大きなプロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトは傘下の子会社をも巻き込む大きなプロジェクトで、一言で言えば誰もやりたがらないプロジェクトです。
プロジェクトがスタートして問題になったのは、各メンバーの仕事に対する理解度の違いでした。日本人従業員の会議での理解度の違い、従業員のやる気の有無、などプロジェクトは早速難航しました。・・・その時「事件」は起こりました。
会議では自分が担当する宿題の進捗状況を各人が述べていきます。一人のアメリカ人女性が宿題を伝えた「私の英語のせい」で何もできなかったと言ったのです。
私は驚きました。理由を聞いても相手は「分かんなーい!」と言い張り完全に逃げおおせました。彼女はプロジェクトに参加したくないために「私の英語」を言い訳したのは明白でしたが、この事件は非常に衝撃でした。
これでも米国の大学院を出て会社の中でもかなり英語を解する方だと自負していました。それを皆の前でコケにされたのですから、顔面が紅潮するほどの怒りを憶え、しばらくの間、夜も眠れないほど悔しい思いをしました。
勉強してもnativeにはなれない
しかし落ち着いて考えると、私の英語はNativeではありません。録音して聞けば日本人と分かる発音です。私は考えを改め、素直にESL(English as Second Language)の先生に個人指導をお願いしました。
2ヶ月の間、毎週個人指導を受けました。どの音が間違っているか指摘を受け、発音に関してより良い理解を得られました。・・・が問題はNative並みの発音にはまだ程遠いということです。先生からも「どんなに練習をしても成人後ではnativeにはなり得ない」と申し渡され、Native並みの発音向上計画は暗礁に乗り上げてしまいました。
私は成人後に大学院に留学したためnative並みの英語力ではありません。かといって成人前に留学した人が必ずしも有利なのかというと、決してそうではないと思うのです。高校から米国に来ている日本人の多くは、日本語の敬語、漢字の読み書きに苦労しております。母国語も外国語も一律に同じ程度に理解するという人は珍しいのではないでしょうか。
といっても、私は米国で仕事をして生活しています。英語から目をそらして生活する訳にもいきません。しかしいくら勉強してもnativeにはなれず。この矛盾をどのように解消すればいいのか、悩み始めました。
Improvと出会う
当時、ジムで毎週末Pilatesというエアロビに似た運動のクラスを受講していました。レッスン中この悩みを皆に話すと、アメリカ人の友人たちも一様に頭を抱え答えは出でてきません。そんな中、一人の女性が「Improv」と答えました。
Improvが何だったか頭に浮かばず一瞬考えたのですが、アメリカの漫才だということに気づき、躊躇しました。1999年の渡米時、最初に観た映画がAustin Powersのコメディだったのですが一切理解できず、アメリカのコメディからはずっと足が遠のいていたのです。
コメディは外国人には理解が難しいのです。文化的背景、言葉の遊び、タイミング、演技力すべてが影響するため、敷居が高いものです。皆にやれやれと押されて、仕方なく、地元のコメディクラブの扉を叩きました。
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コメディクラブに参加
それまで知らなかったのですが、全米各地にあるコメディクラブ(日本でいうところの「寄席」みたいなものでしょうか)では、演技やコメディの授業が行われています。数多くの一般人が参加して、人気が出た人はプロのコメディアンになるようです。米国で有名なコメディアンの多くがSecond Cityと呼ばれるコメディクラブで修行を積んでいます。
授業では、慣れない参加者に演技やボケるコツを教えてくれ、嬉しい事に非nativeの私でも気後れすることなく参加できる雰囲気でした。
初級レベルでは簡単なゲームを相方と繰り返し、即興で反応できるスピードを養っていくのですが、これが難しい。即興ゆえに相方が何を切り返してくるか分かりません。更にこちらは非nativeです。相方の回答が必ずしも理解できるとも限りません。切り返せたとしても、今度は相手が私の回答を理解してくれるとも限りません。
初回の授業では汗びっしょりになり、久しぶりに英語をしゃべる緊張感を味わいました。渡米してきて10数年、馴れ合いで英語を喋っていた自分に久しぶりに訪れた緊張感は新鮮でした。
非Nativeは長所?
クラスの回を重ねるごとに、あれほど払拭しようとしていた自分がNative English Speakerではないことが返って有利に働くことに気付きました。
Improvでは観客に質問を投げてヒントになるキーワードをもらう形でコメディに入ることが一般的です。「昨日の晩御飯は?」「一度でいいからしてみたいことは?」など他愛のない質問を観客に投げかけます。
この質問の回答が意外と難解です。観客はビールで酔っ払っている場合もあります。人によっては俗語の多い回答をしてくることもあります。会場によっては音が拡散し、よく聞こえないこともあるのです。かといって、本番のショーでは聞き返すこともできません。
数年前の本番のショーで「ChapStic(唇につけるクリームのこと)」を「Chopstics(お箸)」と誤解し、そのままパフォーマンスに突入しました。当然、相方と全く話が咬み合いません。私も首をひねりながらコントを続けていたのですが、そのうち観客が私の勘違いに気が付き、大爆笑になったことがありました。
結果的に、お客さんから「ああいう展開になるとは思わなかった」と絶賛をもらったのです。怪我の功名とはいえ、嬉しい気分になったことは否めません。
楽しんで英語が勉強できればそれよし
結局、Improvを通し「Native English Speaker」になりたいという私の稚拙な夢は消えてなくなりました。現在の私は、楽しんで英語が勉強できればそれよしと考えています。
Improvは非常に高度な英語力を要求されるため、渡米直後の方にはお勧めできません。在米経験が長く自分の英語力に壁を感じ始めた方は、一度チャレンジしてはいかがでしょうか。
デトロイト近郊に済む日本人は数多いですが、Improvをする日本人は極稀でしょう。実際、同邦人に会ったことはありません。Improvは私の在米生活でのちょっとした自慢話になりつつあります。
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この記事を書いた人
初めまして!日本の大学を卒業した後、米国の大学院に留学し漂流し続けること10数年。今年で米国生活16年目になります。お笑い好きの40男が加齢臭を漂わしながら、ミシガン州デトロイト近郊から海外生活と留学の知恵や経験をお届けします。