突然フライトがキャンセルに!?タイの格安航空会社で突如起きた社内トラブル
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一昔前は海外旅行と言えば莫大な費用がかかっていました。しかし格安航空券が出回るようになり、合わせて備品や設備を極力抑えた「格安航空会社」も多く登場しました。これにより多くの人が気軽に海外旅行に行けるようになりました。ところが低価格実施のためにコストを抑えたことにより、タイの航空会社である問題が起こったのです。
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競争が激しいタイの格安航空会社の事情
現在タイでは近隣国からも多くの格安航空会社が参入しています。タイで格安航空会社としてよく知られているのがマレーシアの「Air Asia(エアアジア)」、インドネシア「Lion Air(ライオンエア)」、そしてタイ「Nok Air(ノックエア)」などがあります。
それぞれの航空会社が、シーズンごとに特定の路線に対して格安プロモーションをおこなったり、街中に大々的な広告を出したりして、顧客獲得に乗り出しています。
そして中でも「タイ国際航空(タイエアウェイズ 通称TG)」が多く出資し、事実上の子会社にあたるノックエアは、タイでも人気の格安航空会社のひとつ。ドンムアン空港をハブ空港として、タイ国内線(主に南部への便が多い)を多くシェアしています。
会社の名前のノックエア(ノックはタイ語で鳥)の通り、機体の先端が鳥のくちばしの様に黄色にペイントされているのがトレードマーク。可愛らしい姿が人気で写真を撮る人も多く見られます。しかしそのノックエアで先日ちょっとした事件がありました。
出発当日に空港で告げられた便のキャンセル
それはドンムアン空港発の国内線でのことでした。ノックエアの便に乗る乗客達は時間通りに空港へ着きます。しかしそこでその日の便の内、合わせて5便が欠航になったとの知らせを受けたのです。
通常は悪天候や事故を除いて、当日まで一切の知らせもなしにキャンセルなどありません。当然ながら乗客たちは理由を尋ねます。しかしノックエアのスタッフは機材などに不備があった、コンピューターの調子が悪いなど、明確な理由を説明しません。そのため、一部の乗客が納得できずにその場は抗議の嵐となったのです。
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代表取締役が自ら空港で謝罪する事態に
結局多くの乗客から非難を浴び収拾が付かなくなったために、ノックエアの代表と役員が空港へやって来て、改めて乗客にお詫びする形となります。そしてノックエア側は「他の航空会社に早急に代理便を要請する」と説明しましたが、結局その場では欠航の本当の理由は語られませんでした。
その日は2月14日の日曜日。バレンタインデーでもありました。代理便を用意すると言われても、仕事でその便に乗る必要がある人や、休日に家族の元へ帰る人など、さまざまな理由で予定を変えられない人たちもいたはずです。
テレビのインタビューに応じた2人の社員
この事件のあと、とある報道番組がノックエアに対して取材することになります。そして現在もノックエアに在籍しているベテラン操縦士と、元ノックエアの社員である2人が社内で起こっている「問題」についてリークすることになりました。
彼等の説明によると、現在ノックエアでは深刻な人手不足になっており、運航されている便の本数に対して操縦士が全く足りていない。そのため、まだ経験の浅い操縦士達に対し本人の意思に関わらず「機長」という役職を与えてどうにか回している状況である。
本来機長の役職に付くには5年以上の経験が必要などの規定があるが、彼等は2〜3年の経験しかないにもかかわらず、機長として操縦を任せるシステムになってきています。もちろんそれに対する給与や手当は付くものの、その額も決して良いとは言えず、リスクに対する割が合いません。
何より実力が伴わない者もいるというのが事実で、これは当の「機長」本人たちも自覚している。しかし会社側から強要され、とにかくスケジュールを組んで今まで通りフライトを運航すると指示されたのです。そのため、何人かの機長が任務を放棄、言わばストライキする形になり、今回の事態が発生したと説明しています。
そして代弁を務めた社員はこう主張しています。「私たちは全ての乗客と、それに関わる多くの人々の命を預かって飛ばなければならない。十分な訓練や経験がない操縦士に、このような役職を与えていることに納得がいかない。航空機はちょっとした判断ミスが大きな事故に繋がる可能性がある。彼らのような経験が少ない操縦士たちは、まだ自分に自信を持つことができないでいる。会社は無理にでも操縦席に座らせると言うが、そんなことをすれば彼等がパニックになるのは目に見えている。それなのに操縦を強要するのは乗客に対する配慮がなく、彼らの命を見殺しにするのと同じです。」
この現ノックエア操縦士は会社から非難されるリスクを負いながらも、全てを話したのです。そしてインタビューをしている1人が彼にこう尋ねました。「あなたはノックエアが嫌いなのですか?」すると彼は「いいえ、違います。この会社にいたおかげで、私は家族や車、家も手に入れることができた。私はこの会社が好きですし、とても感謝しています。しかしこのようなシステムを強要する今の経営には納得がいきません。」
今後の改善が求められる結果になった
その後、フライトを拒否した機長たちがどうなったのかは報道されていませんが、会社側は早急にこの問題を改善をすると言う声明を出しました。しかしこの問題を代弁した彼等の主張は間違ったことではありません。
人手不足から「今度から機長だ」と任命された未熟な社員はどう感じるのでしょう。自信がなく拒否する人もいれば、機長になれたことを喜ぶ人もいるのかもしれません。
しかし航空操縦士というのは、普段から自身の生活も厳しく管理しなくてはならない職業であり、多くの人の命を預かる重要な仕事になります。
それを嫌がる社員に対して無理に任命するというのは、果たして利用する乗客のためになるのでしょうか。どんな職業に置いても、人が足りないという理由で人選をするのは本末転倒であり、やはり間違っているのではないでしょうか。
格安航空会社はすでに消費者にとって、大幅に節約できる交通手段として浸透してきています。会社である以上は事業として利益を出さなければなりません。しかし格安にするためにサービスの質どころか、人件費を削って安全の質を落とせば、いずれ取り返しの付かない事態が起こる可能性がないとは言えません。それが公になったのが今回の事件だと思います。
タイの国内線として利用される機会の多いノックエア。今回の件で利用者を困らせる結果になったのは事実です。しかし、最悪の事態が起こる前に問題解決に向かって動いたという意味で、結果としては良い機会なのではと感じます。今後サービスを利用する側にも不安がないように、社内環境が改善されることを期待していきたいものです。
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この記事を書いた人
タイ在住。タイの南部からバンコクに引っ越してきました。お寺巡りとプラクルアン集めが趣味。休暇はタイの南の島でシュノーケリングするのがお決まりの過ごし方。