国際結婚こぼればなし前編〜実際に起こりがちな問題、悩み編〜
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イギリスでは国際結婚や恋愛、お互いが違う国の出身のカップルがとても多く、皆それぞれに悩みや不満があるようです。筆者も国際結婚をしており、先日地域でおこなわれた国際結婚に関するセミナーに参加したのですが、たくさんの共感する点がありました。そこで今回は国際結婚の問題、悩みについてお伝えします。
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言葉の壁
国際結婚で真っ先に挙がるのが言葉の壁の問題です。どんなにお互いの国の言葉に長けていても、喧嘩やこみ合った話になると上手く100%伝えられず、それが物凄いフラストレーションになってしまったり、誤解が生まれたりすることがあります。
夫と私の例をあげると、言葉と言うものはその国の文化を表しますから、そもそも日本語を英語に訳したところで、その文化の中で育っていない彼に完璧なニュアンスは伝えきれません。
極端に言えば日本語が完璧であっても、和食の「きんぴらごぼう」を理解できない人がいるのと同じです。日本人ならきんぴらの風味や調理法、ごぼうがどんな食材か説明なしに分かりますが、世界のすべての人が理解できるかと言ったらそうではないのです。言葉がいくらできても日本人同士のように「あうんの呼吸」で分かり合えることが少なくなるため、母国語でない言葉で1から説明をする手間は本当に気力、体力を消費します。
宮沢賢治などの日本の本を翻訳したとあるイギリス人は「日本語には英語では表現しづらい、またはその美しいニュアンスが英語にすることにより損なわれてしまう言葉が山ほどあり大変苦労した。」と語っていました。プロでさえそうなのですから、私たちが完璧に意思疎通できるようになるまでには膨大な努力と忍耐がいるのです。
また、多彩な言い回しで相手との摩擦をさける傾向がある日本語に慣れ親しんだ私たちには、相手にそのつもりがなくても、その言葉がときには素っ気なく、突き刺さるように感じてしまうこともあります。
例えば英語で言えば「I dont know.」であっても、ただ単に彼は「知らないなあ。」程度で発したつもりなのに、日本語を話す私たちには「わかんないなあ、ごめんね。」、「どうなのかなあ。」などと柔らかく言葉をいろいろ選びますから、直訳してしまい「知らないよ。」と素っ気無く聞こえることがあるのです。もしくは「興味がないよ。」とすら聞こえてしまったり、深読みしてしまい心配になるのです。
逆にイエス、ノーを言葉ではっきりさせる夫に、私が丁寧にお願いした普通の日本語の表現が「何が言いたいかわからずに混乱するし、はっきり言ってくれないと困る。」となってしまう場合もあります。
文化の違い、生活習慣の違い
ここは書き出したらきりがないので、筆者の場合を例に挙げてみます。
日本にはお返しと言う文化があります。何かをいただいたり助けていただいたら、きちんと形でそれを表現します。更には、お祝い事やお見舞い、冠婚葬祭などでも、お金を贈ったり、供えさせていただいたり、プレゼントを贈らせていただいたりします。
ですが、そういう習慣がない国もたくさんあるのです。例えば日本なら妻の友人が結婚したらご主人はお祝いに理解を示してくれることが多いかと思いますが、「会ったこともない知らない相手にお祝いを送るのは変じゃないか?」と不自然に思う文化もあります。
国際結婚をして海外で住む場合は特に、親族との距離があり、なかなかパートナーを紹介するなどの交友もままなりませんから、甥、姪の入学祝に友人たちの結婚、出産などさまざまな場面で、こういった摩擦が起こることも少なくありません。
また、私の友人は「日本から友人が私が恋しいだろうといろいろと食材を送ってくれるの。会ったことない夫のためにお菓子を添えてくれる。でも彼は貰ったお礼を言うどころか、当たり前のように食べちゃうだけなのよ。もう何年もそうなの。手紙くらい書いてくれたらいいのに。」と、吐き出した友人も。
ですが、これもやはり文化の違いなのです。どちらが悪いともいえないのです。中には「相手の負担になるかもしれないし、気を遣わせるからお祝いもプレゼントもよほど親しくなければ贈らない。」と言うのが礼儀、マナーであるという文化の中で育ってきた人もいるのです。
「もらったら当然ありがとうって思ってるよ。でも、贈り物に対して何か返したら、あなたのプレゼントに対して私はこれを返したからねって釘を指すみたいで、相手が不愉快になるだろう?俺が人に何か贈って相手が喜んでくれたら一番嬉しいし、お返しが来たら気を遣わせちゃったかなと、不安になるよ。」と夫は言います。
ですが、日本人の私たちの事情としては、日本の友人や家族、知り合いに対する独自の文化がありますから、やはり何もしないことが不義理になってしまう場合も多いはずです。そうなると、夫に神経をすり減らしながらお願いするか、自分の給料から、または貯金を崩しながらやっていくことになります。
たった一つの文化の違いでもこれだけ頭を悩ませるのですから、それは大変です。
仕事、社会、金銭面での悩み
嫁いだ先の法律によっては就業するのが難しかったり、言語が問題で思うように就職できない場合もあります。同じスキルならその国の言葉を操る現地の人の方がもちろん有利です。
それによってなかなか社会に溶け込めず、家にこもりがちになってしまうこともあります。日本と違ってエンターテイメントが充実していない国や、生活が不便な国もありますし、映画を見ようにも言葉が分からず余計に落ち込むばかり、ましてや夫に金銭面を頼らねばいけなくて習い事なども諦めたり、買い物も好きだったカフェめぐりも我慢しなくては、という場合も。こうなってくると本当に孤独で、社会から切り離されたように感じることもあると思います。
仕事に関する価値観の違いも国際結婚では起こるようで、「キャリアを積み重ねて大事にしてきたから、夫とも結婚後働く事を約束してもらっていたけれど、いざとなったら彼の国の伝統から外れるって周りの家族に散々反対され、仕事をやめるか、彼と離れるか、もうどうしていいか分からない。」と悩んでいる方もいました。
逆に「私の国では女性は家にいて家を守るのが当たり前だけど、仕事をしていないってイギリスで言うとひそひそ悪口を言われたり、病気なんじゃないか、社会性に問題があるのかって勘ぐられてしまう。物価も高いから最近は共働きをするように夫に勧められているけど、私、英語が得意じゃないしキャリアもないから不安とプレッシャーで苦しいし怖い。」という女性もいました。
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子供の言葉の問題
子供ができた場合は、言語も難しいのです。上手くバランスを取りどちらの言語も話せるようになるならいいのですが、片寄った場合は母親(または父親)と子供が何を話しているかわからなくて片方の親だけが茅の外になったり、気がついたら子供の英語が上達しすぎて上手くコミュニケーションできなくなることも。あるいは日本語ばかりで接していると、子供が現地の学校で英語が未熟と感じるというような問題もあるようです。
故郷から離れるストレス
桜の季節にはお花見をし、夏には浴衣で花火、秋の鈴虫の声をお月見と楽しみ、冬にはみんなでお鍋、こたつでテレビのお笑いを見ながらミカンを食べて…。自分の何気なかった日本での一幕を思い出し、恋しくホームシックになることは当たり前です。ですが、そんな感情も、その文化に育っていないパートナーには理解されず、相談しても「ふーん、桜はそんなにきれいなんだ。」程度の言葉しか返ってこず、かえって孤独を感じる場合もあります。
お正月などの伝統行事の際にもその傾向が見られます。毎年日本に帰る友人もたくさんいますが、それが叶わない場合もあります。逆にクリスマス時期に、本物のもみの木でできたツリーの香りや、ミンスパイを懐かしく大事に思うパートナーの気持ちを私たちが心から理解できるまで、それこそ何年もかかるかもしれません。
夫婦お互いの国が住んでいる場所から遠い場合には、どちらへ帰るのにも膨大なお金、時間がかかります。子供が二人いたら家族でいったいどれだけの飛行機代がかかるのでしょうか。祖父母や親に子供を会わせたい、故郷の懐かしい家族や友が恋しい、そう願うのはどちらも同じです。
友人や家族の幸せな瞬間、更には大好きな人に何かあっても、すぐに駆けつけられるかと言えばそうもいきません。大事な友達が続けて結婚してもその場にいられないのは物凄く残念で悲しいですし、大好きな人にお別れをすぐに言えないときは、心の中で「ごめんなさい」と泣きたくなります。
また、家族や友達が集まるそういったイベントに参加できないことで、自分がどの国にも属さないような宙ぶらりんな不安な気持ちが芽生えて来ることもあります。
「病気で食欲がなくて寝込んでいたら、義母がパンにバターに缶詰のチキンやポテトスープにアイスクリームを山ほど持ってきてくれたの。ありがたくて感動したし頂きたいけど、病気のときに食べるにはどれも私には重たすぎて申し訳なかった。それに、自分が改めて、当たり前だと思っていた環境からとても遠く離れた場所にいることに気づいて愕然としたわ。」
そうセミナーで語ったある女性の声に、私も涙が出そうになりました。
食生活やテーブルマナーの違い
パートナーの家族の前でグリーンピースを左手で握ったフォークで上手く口に運べず、落としてしまい何度も泣きたくなるかもしれませんし、骨付きのチキンをナイフとフォークでうまくさばけずに悲しくなることもあるかもしれません。
季節感に溢れた日本の食事情は実は物凄く恵まれたすばらしいものだったのだと後になってはっとしたり、新鮮なお刺身やモツ料理がもう日常ではなくなってしまったことや、日本では飽き飽きしていた「お母さんのお惣菜」のようなものが無性に食べたくなったりすることもあるかもしれません。
セミナーでも、
「手掴みでピザを食べたら夫の家族に嫌な顔されて以来無理してナイフとフォークで食べてるけど、上手く切れなくてすっかり私だけ冷めたピザといつまでも格闘してるの。全く味がしないわ。」
「私の国でクリスマスは夏だったから家族でバーベキューが楽しみだったのに、暗い冬のクリスマスが未だにしっくりこなくて。芽キャベツをみてクリスマスだねって嬉しそうな夫の様子に、突然悲しくなってスーパーでいきなり泣いてしまった事もあった。」
「最初は何でも楽しかったし試したけど、今はひたすら夫と食べたいものが違うから別に作るの。疲れるし寂しい。」
「何もかも早く閉店してしまうからミルクを切らして大喧嘩したり。私はミルクティーが無くてもこの世の終わりみたいな顔しないし、自分の国では4時に閉まる日曜のスーパーとか、そんな不便なことなかったもの!」
などと、食とそれにまつわる文化に皆が強くストレスを感じているようでした。
まとめ
さて、今回は国際結婚に多い悩みを挙げてみました。「もう、なんだか自信ない、国際結婚に恋愛、難しそう!」と不安に思われた方がいるのではないでしょうか、ですが、筆者は実際国際結婚をして良かったと思っています。どんなに孤独なときがあっても、大好きなお刺身が日常でなくなっても、それでも本当に幸せに思い、毎日はますます穏やかに過ぎていきます。
そこで次回は国際結婚をして良かった点を挙げてみたいと思います。
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この記事を書いた人
イギリスのロンドンはウィンブルドンに住んで9年目です。元ハリーポッターに出演していた夫(南アとオランダのダブル国籍です)と二人暮らしです。私がいっぱい涙が出るくらい恥ずかしい思いをしつつ経験してきた生活の知恵、英語の言い回し、イギリスの穴場やこぼれ話をお届けできたら嬉しいです。またBAFTAの試写会でのセレブリティーの写真もご紹介できたらと思います。