ホーキング博士に学ぶ!論文が世に出るまでのプロセスとは?

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Wikimedia Commons

2018年3月14日、宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士が亡くなりました。その際、博士の最後の論文が公開されたことが話題になりましたが、この論文は当初インターネット上で誰でも見ることのできるサイトにひっそりと公開されていたことはご存知でしたか?そもそも、論文とはどのような形で世に出るものなのでしょうか。ここでは論文が世に出るプロセスなどについてご紹介します。

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論文投稿サイト「arXiv(アーカイヴ)」とは?

arXivのロゴ

テクノロジーに関するメディアWIREDでは、ホーキング博士の最後の論文について、このような記事を公開しました。

英国の著名な宇宙物理学者であるスティーヴン・ホーキング博士が亡くなる10日前の2018年3月4日、コーネル大学が運営する論文投稿サイト「arXiv(アーカイヴ)」に掲載されていた論文が、ひっそりとアップデートされていた。

WIRED:ホーキング博士、最後のセオリー:彼が多元的宇宙について考えていたこと

このコーネル大学が運営する論文投稿サイト「arXiv(アーカイヴ)」というのが、研究者にはおなじみのページで、多くの研究者が利用しています。

査読済論文とは?一般的に論文が公開される方法

論文のイラスト

一般的に論文が公開される方法としては、学術雑誌に掲載されるか、arXiv(アーカイヴ)など論文投稿サイトにアップするかの方法があります。

学術雑誌に掲載される場合

研究者は論文を学術雑誌に送り、内容を審査されます。審査では容赦ない突っ込みが入り、大抵その突っ込みには修正が伴い、査読者、編集者、共著者全員が納得するまで長大な作業を要します。

その後、審査の通った論文は「査読(さどく)済論文」とされ、晴れて学術雑誌に掲載され、世に出るのです。

論文投稿サイトにアップする場合

一方、コーネル大学の論文掲載サイトは、基本的に大学や研究所に所属する人ならば誰でも投稿することができ、研究者は自らこのサイトに論文をアップします。そのため、査読をされていない論文も多く含まれます。

ごく稀にトンデモ系の論文や、エイプリル・フールのお遊びのものが掲載されることもあるようですが、もちろん論文は英語ですし、以前ご紹介した通り論文を執筆するのに必須のソフトウェア「LaTex」で執筆する研究者がほとんどですので、誰でも掲載可能とはいえ、簡単なことではありません。

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研究者が自身の論文を自ら公開する理由とは?

パソコンをしている男性

なぜ、多くの研究者はサイトに自身の論文をウェブサイトにアップするのでしょうか。それは、審査の通った論文は学術誌が一定の期間著作権を持つため、その間に論文を読むには有料でダウンロードしなければならないからです。値段は分野や学術誌によって異なりますが、1つの論文につき30USドルと、結構な額です。

また、研究者は論文執筆後すぐに他の人にも読んで欲しいのと同時に、他の研究者の論文も読みたいということもあります。査読済論文になるには、分野や学術雑誌にもよりますが、長いと1年近くかかるのでなおさらです。

続いて、研究者はどのタイミングでサイトにアップするのでしょうか。それは、学術雑誌に送った段階だったり、査読者を経由し学術雑誌から最初に承認されてからであったり、人それぞれのようです。

学術雑誌に提出する前の意見交換のために執筆直後に掲載する、という人もいれば、学術雑誌に掲載するにはお金がかかるので、敢えて掲載をしたくないという人もいます。

同時に、研究者はその論文が査読済かそうでないかを重要視します。先にも述べたように、査読された論文は共著者、査読者(学術雑誌が研究者に査読を依頼し、執筆者には誰が査読した人がわからないシステムになっている)、学術雑誌の担当者など数々のチェックをくぐり、果てはスペースの間隔までもチェックが入り、やっと日の目を浴びる苦労の塊のようなものです。

査読されていない論文は、参考文献として使える場合もありますが、査読済でないため引用する際は特別注意を払う必要があります。それだけシビアな世界なのです。

実際にホーキング博士がアップした論文とは?

ホーキング博士の論文
arxiv.org

ホーキング博士の論文を例に見て見ましょう。ホーキング博士の論文はこちらで見ることが可能です

論文のタイトルの下に青い文字のホーキング博士の名前ともう一名、トマス・ヘルトーク氏の名前があります。最初に書かれた氏名が、1st author:第一著者、筆頭著者と呼ばれ、この論文を書いた人です(トマス・ヘルトーク氏は共同執筆者となります)。右横の、Downloadの下、PDFを押すと実際の論文を読むことができます。

ページ右下もReferences & Citations欄のNASA ADSというリンクを確認します。これはNASAのデータベースなのですが、コーネル大学のサイトとリンクしています。

開いたページの左側にOrigin:の箇所に「SPRINGER」と記載されていますが、こちらが出版社の名前となり、Publication:箇所には掲載された雑誌名「Journal of High Energy Physics」が記載されています。

学術雑誌に掲載の論文は、編集作業が入るためarXiv(アーカイヴ)の論文とは細かい箇所が異なることも。お金を払って読む理由はそこです。

まとめ

以上、研究者の論文が世に出るまでのプロセスについてご紹介しました。研究を続ける人たちが、将来コーネル大学のサイトに、研究と共にその名を残して欲しいものです。

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この記事を書いた人

sandaz
sandaz

科学や学問には一切無縁の私ですが、夫が再び研究の道に戻りこの地に至ります。私自身こんな世界もあるんだ!と感じている海外物理系アカデミアを超普通の人の視点からお伝えしたいと思います。

http://masjapones.com/

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