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Wikipedia『ディアボーン(ミシガン州)』

アラブ系住民の巨大なコミュニティの町「ディアボーン」

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最近、宗教の話題が続いておりますが、今回で一区切り、最後にイスラム圏の話で終わりにしたいと思います。世界の三大宗教はキリスト教、イスラム教、仏教とすると、二番目のイスラム教は私にとって縁遠い存在でして、私の回りに信者はおりません。今回、アメリカ国内で中近東の人が多く住んでいるミシガン州Dearborn(ディアボーン)という街に行ってまいりましたので、その時の体験をお話ししたいと思います。

一人で行くのはちょっと寂しいので、私は日本人の友人を誘いました。彼は幼いころ、サウジアラビアで過ごしていた帰国子女なので、きっとアラビア圏に行くことに躊躇はないはずです。

目指すはデトロイト郊外のDearborn(ディアボーン)。この街には多くの中近東系の人達が住んでおり、レストランや食料品店も数多く並んでいます。一緒に車に乗り、彼の地を目指しました。

アラビア語表記のお店

事前にYelpで調べておいた地元で評判の良さそうなレストランを目指したのですが、いざ現地に着くと困ってしまいました。一連のお店の表記が英語よりアラビア語の方が多く、判読がしにくいのです。

私は海外に行っても平気で一人でお店に入っていくほど図々しい人間です。例え言葉が分からなくても、西洋ではアルファベットのおかげでグーグル翻訳などを使えば意味が分かります。中華圏では当然、漢字ですから日本人だったら意味が推測できる場合が多いでしょう。

しかし、アラビア圏ではアラビア語なので、私はiPhoneに文字を打ち込むことすらできません。写真に撮り、その文字をソフトウェアが正確に翻訳してくれることを期待するしかないのですが、かなり煩雑な手間のかかる推測になります。

入り口が分からないお店

やっと目当ての「 Sheeba Restaurant 」を見つけ、入ろうと思ったのですが、はたと困りました。一体どこがお店の入り口なのか、よく分かりません。一応、小さなドアがあるようですが、そこは裏口にも見えます。しかし、裏口がメインの通りに面しているのも不自然な造りです。

ドアのガラス越しに中を覗いてみると、もうひとつドアがあり、そこから中で数人の客人(?)がカウンターで注文しているようにも見えます。

意を決して、友人と一緒にドアを開けて中に入り込みました。

店内は独特の雰囲気

お店の中に入ってみると、お世辞にも広いとはいえないレストランに数人のアラブ系のお客さんがおりました。カウンターでレジを叩いているのは、お見受けするところアラブ系の20代の若い男性。

一般的にアメリカではレストランに入ってもウェイターがテーブルに案内してくれるまで勝手に着座してはいけないのですが、ここはどうも勝手が違うようです。

またカウンターの横に、一人おじいさんが黙って突っ立っているのも不自然です。このおじいさんはオーナーなのか、店員なのか、それとも客なのか、判別がつきません。友人と二人でお店のルールを見極めるためにしばらく観察をしていても、誰も私たちに声をかけてくれません。

店内は全員アラブ系

しかたないので、カウンターにいる若い兄ちゃんに英語で質問をすると、カウンターで注文してもいいし、テーブルに座ってもいいとの回答です。私たちは持ち帰りではなく、その場で食べたかったので着座すると、今度はいつまで経ってもメニューを持ってきてくれません。

待っている間、友人と話しながら周囲を観察すると、案の定、アジア系は私たち二人だけで、他は全員アラブ系。皆、哲学者のように深刻な顔をしており、顔の彫りが深いせいか、見た目は、どなたもちょっとコワイ感じです。

Cross-race effectを体験

このことを友人に伝えると、彼は幼いころ、沢山のアラブ系の人を見たことがあるせいか、何も感じないとのこと。

そこで思い出しました。心理学では、” Cross-race effect ”というのですが、自分の人種より、他の人種の特徴を捉えにくいことを指します。おそらく友人は幼少期に中近東の人間を沢山見ているので、それほど違和感を感じず、ひとりひとりの特徴を捉えることが私よりできるのでしょう。

考えてみれば、私はアメリカでほとんど中近東からの友人はおりません。英語学校で勉強していた時分、何人かのアラブ系の学生と知り合いだったくらいで、ほとんど知り合う機会はありませんでした。おそらく、私の個人的体験の少なさが、この恐怖感と、皆同じ容貌に見える感覚に影響を与えているのでしょう。

随分待っていると、先ほどのレジの兄ちゃんが、メニューを持ってやってきてくれました。最初は愛想が悪いかと思ったのですが、笑うと白い歯のこぼれる好青年です。

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メニューが想像できない不安

残念ながら、私たちは自立して注文を出来るほどのアラビア料理の知識がありません。また、予想したとおり、豚料理はありません。素直に、私たちがお勧めを尋ねると、彼は私にはローストチキンとライス、友人にはラム肉とライスを勧めてきました。いわれるままにそれを注文しました。

私は素直にこのレストランに来て反省をしたのですが、私はアメリカ人の友人にしょっちゅう、日本食レストランに連れて行けとリクエストされることにうんざりをしていました。

人の顔を見れば二言目には「Sushi!」「Sushi!」ってうるさいなあ、と思っていたのですが、今回、アメリカ人の友人たちの気持ちが大変良く分かりました。レストランに来てメニューが自分の分からない外国語で書かれており、その横に英語で説明文が書いてあったとしても、どんなものか、想像がしにくいのです。

これがまだイタリアンや中華など慣れ親しんだ料理だったら、なんとか想像できなくもないのですが、中近東料理のように自分の人生において数回しか食べたことのないジャンルの料理は、想像がほとんどできなく、お手上げになってしまいます。

今後、アメリカ人の友人たちにリクエストされたら素直に日本食レストランに連れて行ってあげようと思いました。

抜群に美味しいアラビア料理

さて、注文はなかなか取りに来なかったのですが、料理は結構手早く出来上がりました。私には大皿のサフラン入の長粒米の上に、でかいローストチキンが鎮座した料理、友人にはチキンに代わり羊肉が横たわっています。

レジの兄ちゃんは気を利かしたのか、取り皿とナプキンをくれ、一見さんの私たちはどうもVIP待遇に昇格したようです。なぜなら、他のアラブ系のお客さんたちにはナプキンが手渡されていませんでしたから。

食べてみると大変美味しく、ムリをして(?)、お店に入ったかいがありました。友人のラム肉も柔らかくクセがなく、日本ではちょっと食べられないようなお味です。またたくまに平らげ、お礼を伝えてレストランを出ると、今度は Arab American National Museum を目指しました。

Arab American National Museumを訪問

博物館に着いて中に入ってみると、小綺麗な建物です。意外と大きく、2階建て。アメリカにやってきたアラブ系の移民たちの歴史を紹介しており、どうもディアボーンには自動車メーカーのフォード社の工場があったので、労働者として住み着いたのがきっかけのようです。

移民の歴史は苦労の歴史です。言葉も十分話せず、外国の不慣れな地で生活をしていかなければなりません。それ相応のバイタリティが必要になります。

移民たちの残した生活用品、入国申請用紙などを見て感慨にふけっていたのですが、面白い注釈がついていました。アメリカではよく、アンケートやビザの申請用紙などに人種の項目があります。アンケートでは任意項目になっているのですが、ビザの申請用紙の場合は必須項目でどこかに丸をしなくてはいけません。

日本人の私は当然、”Asian”になりますが、”Arabic”という項目が以前なかったでそうです。レバノンやヨルダンなどから来た「中近東」の人たちは、”African”や”Asian”に丸をせざるを得ず、書類から中近東系の人であるかどうか調べることは不可能であると書いてありました。

考えてみると、この人種のカテゴリーも結構、不自然です。もし、日本生まれで片親がレバノンからでもう片方の親が白人のアメリカ人だったら、カテゴリーはどこに当てはまるのか。単純に人間を区別すること自体にムリがあるということでしょう。

博物館を見終え、土産物屋を物色していると、受付のお姉さんが声を掛けてきてくれました。日本人の来館者は珍しいので気を利かしてくれたのでしょう。会話の最中、彼女自身のご両親もレバノン出身で、彼女はアメリカ生まれだということを教えてくれました。

日本人にも合うスイーツ屋

受付の彼女に、この後にお茶をしに「 Shatila Bakery 」に行く予定だと告げると、「そこにはぜひ、行くべき!」と声を大にして勧めてきます。何人かのアメリカ人の友人たちもディアボーンにあるベーカリーの話をしており、私も以前から一度行ってみたいと思っておりました。

現地に出向いてみると、大きなお店に大きな駐車場。大変盛況なベーカリーであることが伺えます。中に入ってみると、なんと番号札を取り、ショーウィンドウにある菓子パンやケーキを注文していくシステムのようです。自分の番号が呼ばれると欲しいものを取ってくれる店員さんがつき、その場で食べることもできます。

アメリカでは一般的にケーキは甘いだけであまり美味しくないことが多いので、私は疑心暗鬼を抱えておりました。そこで自分の番号が呼ばれ、ひとつだけケーキを食べたいことを伝えると、店員さんが意外な顔をします。

友人の観察によると、他のお客さんは箱単位で買っていくので、ケーキひとつだけというのは、田舎者のすることと思われたんじゃないかと彼はいいます。

別に田舎者と思われてもいいので、肝心のケーキをテストのため口にすると、意外や意外、甘すぎず、日本人の舌にもなじむ大変美味しいケーキです。友人は一週間分買い込んでおり、私もケーキを食べるやいなや、持ち帰り用に幾つか買い込みました。

コミュニティで成り立つアメリカという国

アメリカの面白い点は、横浜の中華街のように移民が自分たちのコミュティをいたるところに作っていることでしょう。そのコミュニティに飛び込んでいけば、本場の料理や文化がアメリカナイズされているとはいえ、楽しめます。

アメリカ自身が小規模の地球のような国家ですので、車で違う街に行くとガラリと様相が変わることがあります。違うコミュニティに飛び込むのもアメリカ生活での大きな楽しみのひとつです。是非お薦めします。

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