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自由診療がフェア?日本の保険制度は効率的?<アメリカの健康保険体験記>
在米して16年になりますが、アメリカの健康保険についてはいまだにあまり機能していないと感じます。今回は私の例を取りながら、アメリカではどのようにして医者と会って保険を使うのか、話題のオバマケアは在米邦人にとってどんな影響があるのか、そしてアメリカに留学予定の人ないし就職・駐在予定の人に向けてアドバイスを書きます。
在米して16年になりますが、いまだにあまり機能していないなと感じる社会制度のひとつに健康保険があります。
ご存知のように米国には日本のような国民健康保険の制度が存在しません。一般的に雇用者が提供する自由診療が主流です。ここでは私の例を取りながらアメリカの健康保険についてお伝えしましょう。
アメリカの健康保険の種類
健康保険には一般的に「Medical」「Vision」「Dental」の三種類があります。発熱がある場合は「Medical」、目に支障がある場合は「Vision」、歯が痛い場合は「Dental」の保険にお世話になります。
実際に医者に会うまで
今回は仮に発熱があったとしましょう。発熱ですので、それほど重症とは思われません。アメリカ人は発熱程度では医者には会わず、近場のドラッグストアで風邪薬を買うなどして対処します。
発熱が一週間続き自分でも不安になってきた。ここで医者に会いたいからと近場の医院に駆け込んではいけません。「Urgent Care」と呼ばれる緊急医療センターは高額な治療費がかかります。まず自分の保険が使える医院を探す必要があります。
自分の勤め先が提供する保険会社のウェブサイトを見て、ネットワークに所属する医院を探します。保険会社のサイトに自分の住所を入力。できるだけ近くの医院を選び、電話をかけて症状を伝え予約します。予約もすぐに会ってくれればいいのですが、大抵は2、3日後です。
処方薬を購入
あわよく医者に会い、処方箋を指南されても苦労は続きます。処方薬はドラッグストアで処方されます。指定のドラッグストアに自分で行き、処方箋を伝え、自分が保険を持っていることも伝えないといけません。
医療費の請求
処方薬を受け取り数日経ち、無事に症状が治りました。この次に来るのは医療費の請求です。
病院に行った際、必ず支払う検診料を「Co-Pay」といいます。検診料金は保険内容で金額が変わります。どの程度まで保険でカバーされるかが異なるからです。
一般の患者で自分にかかる治療費の相場を知っている方は少ないでしょう。病院から千ドルの請求が保険会社にあっても、妥当な金額なのかは皆目わかりません。
患者一人ひとりの健康保険が保険会社によって異なるため、保険請求の計算に非常に手間がかかります。検診から2〜3ヶ月経って、急に請求が来ることも珍しくありません。
保険会社のネットワーク外の医者に会う場合もあり(その場合は保険の負担率が下がる)、保険の計算は複雑怪奇になります。一般人には手の負えない非常に複雑なシステムなのです。
私も過去に保険会社から「計算ミスをしました」と負担した金額の返却がありました。素人が保険内容を完全に理解することは非常に難しいと思っています。
アメリカの医療制度の利用は難しい
上記に挙げた例は私の生活での話です。
Medicalだけ持っていて、VisionやDentalを持っていない同僚もいます。配偶者の保険に加入する人もいます。よって、自分の医療費の請求額については同僚にも相談できず、保険会社のカスタマーサービスと格闘するしかありません。
このように渡米したばかりの日本人には、米国の医療制度の利用は難しいのが現実です。
聞くところによると、日本の会社は人事部が医者を紹介して検診させる、会社で行う健康診断があるそうですが、アメリカではすべて自己責任です。会社が医者を紹介する、健康診断を薦めてくることはありません。入社時に違法ドラッグを使っていないかのドラッグテストがあるぐらいで、健康は自分で管理することが前提です。
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在米邦人にとってのオバマケア
日本でも話題のオバマケアですが、実は私の生活にはまったく影響がありません。
オバマケアは、自由診療を前提とする米国で民間の医療保険会社から取り残されてしまった低所得者を救うためのシステムです。日本からわざわざ米国に来て貧困層になる邦人は多くないためか、私の周りでもオバマケアの恩恵を受けたという話は聞かないのです。
私のアメリカ人の友人も多くが大卒でそれなりの就職先で働いております。オバマケアの恩恵を受けることが少なく、また医療保険は各自の年収と連携するセンシティブなトピックゆえ、話題に登りにくいのです。正直、オバマケアがどのように米国で機能しているのか、実感として私は湧きません。
日本の国民健康保険制度の方が機能する?
私は生まれてから "健康保険証があればどのお医者さんでも自由に会える" 日本の国民健康保険のシステムを当然と思っていました。国民健康保険は、自己負担率は基本的に年齢のみで、雇用主、年収は関係無かったと記憶しています。
米国の場合は、自由診療が当然で、無職の人、年収の違い、雇用主の違い、はたまた本人の選択の違い(人によっては医療保険に加入しない人もいる)によって千差万別です。なにをもってFairというのか分からなくなるほど複雑な状況になっています。
米国人はよく、自由診療の良さを「保険の選択できるのでFairだ」というのですが、私は違うと思います。実際に私の会社の米国人従業員も保険の内容をよく把握していません。保険冊子だけでも往々にして1センチはあろうかという厚さです。素人が完璧な理解の上で、保険を選択することは不可能でしょう。一律に型にはめる国民健康保険の方が一種、機能しやすいのではないでしょうか。
米国の病院では、保険関係の複雑な事務処理のために専用の事務職員を雇い、その結果、医療費の高騰を招いていると聞きます(実際、米国の病院には日本の病院より事務員が多い)。国民健康保険であれば、申請用紙もシンプルになり混乱も少なく効率的、事務処理のミスも少なくなると考えるのは早急でしょうか。私は米国で生活をしていて、自由が必ずしもメリットにはなり得ないことを肌で感じつつあります。
留学予定の日本人へのアドバイス
私が得た経験からのアドバイスです。留学を予定している方は、下記のことを守られるとよいでしょう。
一般的に留学生はMedicalのみ強制加入させられ、VisionとDentalは持っていないことが多い。よって米国に留学後、キャンパスにあるMedical Centerの場所と時間を確認しておくこと。
渡航前に歯の治療、親知らずの抜歯を終えておくことが望ましい。メガネ、コンタクトレンズは米国では医療機器扱い。非常に高額なので、日本で購入しておくこと。一時帰国の際は忙しくても日本の医師による検診をすること。また恒常的な病気を持つ人はかかりつけの医師のアドバイスを乞うこと。
就職、駐在を予定の日本人へのアドバイス
米国での就職ないし駐在を予定される方は多くの場合、雇用主から保険を提供されることになります。
どんなに忙しくても就職ないし駐在した際の保険の説明会をサボらないこと。保険の申請用紙の内容を理解し、必要な項目を記入し家族がいれば家族の内容を含めることを忘れないこと。また健康なうちに、ホームドクターを探しておき検診を受け、病気の場合に備えること。病気になってから慌てて探すのではかなりのストレスになる。
保険の内容を理解し、Dentalでは年に何回まで歯科医師による検診が無料になるかなどを調べ、できるかぎり費用が発生しない範囲内でサービスを最大限利用すること。私の場合、年二回まで無料だが、年二回会っていると虫歯は進行しない。
メガネなどのVisionが必要な人は、フレームがいくらまで負担されるのか、レンズはいくらまでなのか、詳細まで理解してからメガネやコンタクトレンズを購入すること。購入時に保険会社の用紙に購入先のサインがないと負担してくれないかもしれません。
まとめ
以上のように非常に面倒ですが、米国に住む以上、国民健康保険はありません。日本人は国民健康保険に慣れているがゆえに、米国に住むと医療を受けることが難しくなりかねません。日本で医療保険に関して予習してから米国に渡るのも手でしょう。