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イギリスで博士号(PhD)取得を目指す留学とは?ーーエジンバラ大学留学経験者にインタビュー
「海外で博士号を取る」という選択肢を考えてみたことはありますか?実は同じ博士号(PhD)でも、国によってその水準や評価、所要期間は違ってくるんです。イギリスでの博士号取得は、アメリカよりもメリットがあると言う人もいます。そこで今回はイギリスのエジンバラ大学で博士課程の留学を経験した伊藤さんのインタビューをふまえて、その知られざるイギリス博士号取得の実態に迫ります。
今回インタビューを受けてくれた留学経験者
今回の留学経験者インタビューは、イギリスのエジンバラ大学にて留学を経験した「伊藤愛音(いとうあいね)」さん。エジンバラ大学で心理言語学の博士課程を無事に終えるところです。
この記事では、イギリスで博士号を取るにはどんな経験が必要なのか、イギリスで博士号をとるメリットとは何なのか、そして博士課程の留学だからこそ経験できる学びとは何なのか、伊藤さんの体験談とともにご紹介していきます。
(↑伊藤さんの通ったエジンバラ大学の心理学部)
イギリスの博士号の特徴
言語学を究めるためイギリスに渡った伊藤さんは、修士号に加え博士号もイギリスで取得することにしました。まず、イギリス国内において、博士号はどんな価値をもつものなのでしょうか。
イギリスにおいて、博士号とは
イギリスにおいて博士号(PhD)は大学の最高水準とされ、博士課程の学生には3~4年間の研究費用が与えられています。博士課程の入学には、博士課程と同じ分野の学士を優秀な成績で修了しているか、修士課程を修了している必要があります。
講義主体の修士課程とは異なり、博士課程では出願時に提出する研究計画書(Research Proposal)にしたがって行われるプロジェクトの中で研究を行います。
取得に必要なのは論文だけじゃない
博士課程の最終的なゴールは、研究成果をまとめた博士論文を提出することです。伊藤さんは実際に、2つの論文を提出しています。
論文提出時には、他の機関から選ばれるその研究分野のエキスパート(External Examiner)と、所属する大学学部内から選ばれるエキスパート(Internal Examiner)の2人による口頭試問があります。それをパスすることで、ついに博士号取得となります。
イギリスで博士号を取るメリット
中国、イギリスと豊富な留学経験をもち、今後はさらなる新天地で研究を続けたいという志をもつ伊藤さん。博士課程修了後も、世界的な活躍が期待されます。その際に彼女にとってイギリスで取得した博士号は大きな武器になると言えそうです。
その理由は、イギリスで取得した博士号は世界的にとても高く評価されているから。伊藤さんのように研究を続けていきたい人に限らず、就職やその他さまざまな活動を通して国際的に活躍していきたい人にとって、イギリスでの博士号取得は大きな武器となるのです。
また、イギリスの修士号は1年間で取得が可能で、博士号も3~4年で取得することができます。アメリカで取得する場合、修士号で約2年、博士号で約5~7年かかるのに比べると短いことが分かります。つまり、短期間で濃い勉強、研究、経験を積むことができるということ。もちろん、かかる費用も安くすむ上、キャリアブランクを最小限にできるのも魅力です。
卒業後のキャリアとしての「ポスドク」
伊藤さんの今後の進路として候補の一つに挙げられているのが「ポスドク」です。ポスドク(Postdoc)とは「博士研究員」の略称。これは博士号取得後、任期付きで研究員となることを指します。イギリスで大学教授になるのは非常に難しいと言われており、博士課程修了後にポスドクに進む人が多い理由となっています。
欧米では博士号を取得後、1~2か所の研究所でポスドクとして経験を積みスキルを身につけて、将来的に自分の研究所をもったり、または企業で研究を続けるのが一般的なキャリアパスです。つまり任期のない大学教授になる前のつなぎとしての期間や、若手研究員の武者修行の機会として考えられています。
日本でポスドク制度が正式に始まったのは、欧米と比べて比較的最近であることから、まだポスドクのキャリアパスが整っているとは言い難い状況です。
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博士課程の留学生活とは?
ここまでは伊藤さんの留学経験に沿って、博士号取得の実態に迫ってみました。ここからは本来のインタビュー形式に戻り、伊藤さんの実体験をご紹介します。卒業後の進路を有利にするために、博士課程の学生がやっておくべきこととは?
教える経験から学べることも
ーー 博士課程ならではの印象的な経験は何かありましたか?
博士課程2、3年の時に「チュートリアル」といって学部生の授業を受け持つことができました。 自分が受け持ったクラスにはいろんな国籍の子がいたのですが、スロバキアの学生もいました。その子から、イギリスの採点システムと自分の出身国の採点システムが違うからどうにかできないか、と相談を受けたんです。
イギリスだとエッセイなら70点以上取れたらAランクですごいいい成績、みたいな感じなんですね。でもその子の国だと90点以上でいい成績、70点でまあ OK、60 点以下だと不合格、となってしまうそうで。
でもイギリスは40点以下で不合格なので、イギリスのスタイルで点数をあげちゃうと、そのまま国に持ち帰った時に良い成績でなくなってしまうっていう…。でもその子だけにあげるわけにはいかないし…と。困りましたね(笑)
ーー どうやって対応されたんですか?
結局、その子は短期で来ていた子だったので、「もし帰った時の単位とか問題があるんだったら、帰国後先生にイギリスのシステムはこうこうで、 ABCシステムもこう違う」としっかり伝えたらどうか、と話しました。結果、大きい問題にならずに済んだので良かったです。
ポスドクを目指し、新天地に
ーー チュートリアルで培った経験を将来生かしていく予定なんですか?
私は先生になりたい、というわけではなくて、これからも研究を続けたいのでポスドクを申請しています。
チュートリアルは履歴書に教える経験を書くための経験にもなりました。ポスドクでも、 80%研究で20 %授業という博士もいたりするので、教える経験があると就職にも有利になるんです。
ーー そうなんですね!エジンバラ大学でポスドクに進むことができるんですか?
エジンバラ大学でも可能ですが、今はイギリスの他の大学や、オランダ、スペイン、ドイツで申し込んでいます。
ーー 心理言語学を研究するのにエジンバラ大学はピッタリだ、というお話もお聞きしましたが、研究場所を変える特別な理由はあるんですか?
はい。新しい場所を探している理由は、エジンバラ大学の先生と相談した際にもらったアドバイスがあったからなんです。「これからのキャリアを考えて、違う場所で新しいこと学んで色んな研究をしている人と会って話した方がいい」という言葉をいただいて、また新しい場所で研究しようと思いました。
編集部コメント
研究者を目指す人にとって、同じ場所でずっと研究を続けていることは周りからあまり良い評価を得られないそうです。その理由は、「その場所で期間内に学ぶべきことをその人は学べなかった」と判断されてしまうからなのだとか。
伊藤さんのようにさまざまな環境に身を置き、常に強い好奇心をもち続けながらさまざまな経験を重ねる姿勢は、研究者を目指す若者たちの鑑だといえるでしょう。そしてこれは研究に携わる人だけでなく、すべての留学生が大切にするべき姿勢ではないでしょうか。
すでに自分が慣れた環境の中で学び続けた場合、そこで得られることは限られています。その環境の外に飛び出し、新しい経験を求める一つの手段としてあるのが、「留学」です。1か月だったり1年だったり、期間は人それぞれ。しかしその限られた期間に、そこで学べることを全力で学ぼうとすることが大切ではないでしょうか。
こういった意味で伊藤さんの経験は、私たちに留学に対する姿勢のあり方を教えてくれています。
今回紹介した学校の口コミ
名称 | University of Edinburgh(エディンバラ大学) |
---|---|
国・都市 | イギリス / スコットランド / エディンバラ |
学校形態 | 大学 大学院 |
住所 | Old College, South Bridge, Newington, Edinburgh EH8 9YL イギリス |
電話番号 | +44 131 650 1000 |
公式サイト | http://www.ed.ac.uk/home |
口コミサイト | https://ablogg.jp/school/2415/ |
インタビュアー
佐藤果歩(さとうかほ)/早稲田大学3年/アブログインターン生