スポンサーリンク

「黒人」「ユダヤ系」「ゲイ」etc.. ニューヨークに住んで感じる人種・文化の多様性

17925

多様な人種・文化の溢れるニューヨーク。3年間住む中で感じた多様性とそこから考えたことを、体験から私なりにお伝えしたいと思います。

ニューヨークは、絶滅危惧言語も含めると800以上もの言語が話されているという(参考: Endangered Language Alliance )、アメリカでも最も人種・文化の多様化の進んでいる都市だと言えます。一方、2014年〜頻発した白人警官による黒人銃殺事件とそれに抗議するデモ、また2015年6月の米最高裁で同性の結婚を禁止するのは違憲とする判決など、その多様性について日々考えさせられるものがあります。一個人の意見も含まれているかもしれませんが、留学の予備知識として、どこかで参考になれば幸いです。

黒人について

一口に黒人と言っても、アフリカ系もいればジャマイカなどカリビアン系の人もいます。私が周りの黒人の人たちと接して感じたのは、彼らは私たちが思う以上に、黒人であることを意識し、また気にしているということです。

ある友人の友人は、ブログに「いくら社会ステータスが高くても、"黒人"という目で見られることに変わりはない」と書きました。また、日本に興味があっていつか行きたいという友達が一番気にしていることは「黒人だけど周りに受け入れてもらえるかな」ですし、(一・二度ですが)デートしたことのある男性の質問は「自分は黒人だけど君の家族や友達は大丈夫?」でした。

「黒人=どこか怖い」という"無理解による誤った恐怖"が、一連の銃撃事件の原因だと述べている方もいて(出典: 人種対立暴動の背景にある3段階の差別とは )、個人的にも思い当たる出来事があります。

ある深夜にバーで男女共用の1つしかないトイレを使って出ようとした瞬間、店のボディガードの黒人さんがものすごい勢いで入ってきて、一瞬「襲われる!?」と勘違いして叫んでしまいました。後から「俺、あの時すごいトイレ行きたかったんだよ!黒人だからって何かされると思ったんだろ、それは偏見だよ」と話をされて気づきました(確かに、形相もすごかったし本当に怖かったのですが…笑)。

その一方で彼らは、黒人の文化に誇りも持っているし、概して明るい人が多いと思います。見た目の違いと慣れていないことで、「よくわからない他者」という意識や、そこから生まれる偏見から解放されて、もっと彼らと距離を縮められればと思います。

ユダヤ系について

ニューヨークでは、特定の服装(モノトーンの正装に、男性はハットや頭頂にキッパという丸い布を被る)に身を包んだ「オーソドックス(正統派)」という宗派の方をよく見かけます。Kosher(コーシャ)という特定の調理法の食べ物しか口にせず(豚肉も基本食べないそう)、10月半ばに新年の祝祭日があり、クリスマスの代わりに Hanukkah を祝います。

見た目が特徴的なのと(もちろん普通の格好をしたユダヤ人もいます)、独自の習慣があるので特異に見られがちで、かつ「ユダヤ人はずる賢くて金に汚い」などという昔からの偏見が今でもあったりするのですが、基本的に敬虔に戒律を守って受け継いでいる人たちです。

職場では彼らの安息日である金曜夜〜土曜に勤務につけないなどの不都合をどうするかというテーマが問題になるようで、人事の授業のケースで扱われもしました。事実、グループワークで一緒になると安息日やユダヤ教祝祭日にメールも見られないので連絡が取れないなどの不便もありました(笑)。

グループワークのチームメイトであったハリーとは仲良くなって「お寿司が好き」と言ってくれて、そういえば彼らにとっては日本文化も十分に特異なのだ、という当たり前のことに気づきもしました。もし学校や職場などで一緒になる機会があれば、彼らの習慣を理解した上で、上手に付き合えればいいのではないかと思います。

スポンサーリンク

同性愛者について

もう、街中のかっこいい男性は皆ゲイなんじゃないかと諦めたくなるほど(笑)ニューヨークには同性愛者の方が多く集っていて、彼らの「 プライド月間 」である6月の最終日曜日にはゲイ・パレードもあります。ちょうど同性婚を認める最高裁判決が出た時には、市内の沢山のレストランが同性愛者のシンボルであるレインボーフラッグを掲げてお祝いしていました。男性に"husband / boyfriend"、女性に"wife / girlfriend"を紹介されることもあるかもしれませんね。

一方カトリックなどでは「家族のあり方としての男女婚」を守るべく、同性婚に根強く反発する声もあります。日本でも芸能人がオープンにしていたり、トランスジェンダーの問題が取り上げられたりして意識が広まりつつあるかもしれませんが、基本ハッピー・けれどセンシティブでもある彼らの心を理解して、まずは一人の個人として対等に向き合いたいものです。

中国・韓国系について

海外に、とくに欧米に暮らして彼らと会って感じるのは、同じアジア人同士の親しみや、儒教的な価値観(親や礼儀・集団の和を重んじるなど)からくる共感の方が多いです。しかし日本に住んでいたり日本のネットを見たりすると、差別発言をしてはばからない嫌韓の言動や中国のものものしいニュースを目にして暗い気持ちになります。

私がニューヨークが好きな理由の一つは、中国系も韓国系も日系も、その他の多様な文化の中に平等に存在していて、それぞれのアイデンティティや違いを含めて尊重しあえる社会だからなのだと思います。冒頭にも言語の多様性について書きましたが、バイリンガルな子供は実に多く、家庭で話す言語は別々でも、学校など公共の場では皆英語でコミュニケーションしながら価値観・アイデンティティを共有していくというのがニューヨークであり、移民の国アメリカだと言えるでしょう。

隣国であることや歴史的な問題で、国同士の衝突がある程度避けられないとしても、個人的な絆・関係は国家間の対立を超えることができますし、もっと多様性を受容する社会に日本がなっていけたらと思います。そのためにも、より多くの人が海外に出て自分のアイデンティティや隣人や日本の社会をより大きな枠組みの中で俯瞰することができ、個人的にも偏見や差別から心を解放して、自由になれるといいなと思います。

最後に

その他にも、ヒスパニックやイスラム系など、ここに載せきれていない多様な人々に出会う機会があるかと思います。また、文化や価値観の違いを超えて純粋な友情を育むことができるのも、若い学生のうちならではだと思います。

もちろん、自己判断・防衛は大切にしながら(特にドラッグやサークルでの無理な活動・詐欺や性がらみの犯罪などーー全てがまともな人とも言えないのも事実)、せっかくの海外生活の中で、自分の壁やcomfort zone(普段心地よいと感じる領域)を飛び越えて、沢山の人と理解や信頼関係・将来につながる友情を育んでいけることを願っています。ひいてはそれが、紛争の解決や恒久的な平和に繋がるものだと信じています。

この記事に関するキーワード