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ドイツで学ぶピアノ教育の神髄ーーマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク留学生インタビュー

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今回のインタビューはマルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク、ピアノ教育修士2年の大木美穂さんです。日本で教育学部を卒業し、まだ日本では発展が遅れているピアノ教育の神髄を学ぶべくドイツに渡った大木さんにお話をうかがいました。

マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(以下ハレ大学)の大学院でピアノ教育を専攻している大木さん。歴史ある大学の様子や授業内容についてお話していただきました。

日本人にもっと知ってほしい!ハレ大学とは?

(ピアノ科の仲間たちと。ピアノのマスタークラス後。)

ーー まず、現在通っているハレ大学について教えてください。

ハレ大学は、マルティン・ルター大学というだけあってマルティン・ルターが以前教鞭をとっていたことに由来しており、1500年代に創設された長い歴史があります。

教育学部は特に有名で、学生数も多いです。音楽学部の中でも大半は教育学部の学生で、私は正式には器楽教育学部に所属しています。ピアノの他にはギターと歌があります。

ーー 施設はいかがですか?

ハレ大学は一つのキャンパスではなくて街全体に色々な学部が広がっています。それぞれの学部によって使い勝手は様々だと思うのですが、音楽学部は街の中央部にあり、交通のアクセスがいいです。

図書館も各学部が持っているのですが、音楽学部の図書館は街が共同で運営していて資料が充実しています。資料を求めてわざわざ日本から専門家が来ることもよくあります。

ーー 日本人の割合はいかがですか?

音楽学部は学部と修士を合わせても正規の留学生は私1人です。交換留学生は何人かいると思うのですが、日本人は非常に少ないです。日本の音大生はハレ大学に音楽学部があることさえ知らない人が多いので、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。

少人数制が魅力のハレ大学

(大学のピアノ練習室)

ーーハレ大学音楽学部の学生数はどのくらいですか?

修士のピアノ教育専攻は10人くらいで、ギターと歌を合わせても30人くらいです。学部と修士が一緒に授業を受けるカリキュラムも多いのですが、学部のピアノ科も25〜30人くらいです。

ーー 少人数制なのですね!大学の国際色はいかがですか?

他の学部は留学生が少なく、ドイツ人が多い印象なのですが、音楽学部はドイツ人と他国からの留学生が半々です。国はアジア、ラテンアメリカ、スペイン、ロシアなど様々な国から来ています。

音楽学部は人生にわくわくしている人が多いので、一緒に勉強していてとても楽しいです。修士課程は年齢層も20〜30代と広く、現在27歳の私が平均くらいですね。

ーー 学生に対するサポートはいかがですか?

サポートは本当に素晴らしいです。人数が少ないので、学生一人一人をかなり丁寧に見てもらえます。

年に一回、コンサートのテストがあるのですが、事前の試演会やコンサート後にはかなり詳細はフィードバックをもらえるので、最初は驚きました。満足度は総合してかなり高いですね。ハレ大学に留学して、本当によかったと思っています。

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自分自身のレッスン力を磨く

(室内楽の試験後の1枚)

ーー 大木さんが専攻しているピアノ教育課程について教えていただけますか?

ハレのピアノ教育課程は二本の柱で構成されているのですが、一つ目は芸術課程で、自分の演奏のレベルを高めるのが目的です。例えば、曲の解釈を学んだり、自分のパフォーマンス力を高めるための勉強をします。

二つ目が教育課程で、ピアノ教育者としてピアノのレッスン力を高めるのが目的です。どのように人にピアノを教えるのか、教授法を学びます。 これら二つはダブルディグリー並みに授業をこなさなければならず、最初は両立が大変でした。

ーー 両立を可能にするために、どんなことを心掛けていましたか?

前提として、ピアノの練習にはものすごく時間がかかるんですよね。芸術のスキルを伸ばそうと思うと、それなりの練習量が必要になります。

日本の音大生でも1日に約8時間くらい練習するのですが、ハレ大学のカリキュラムでそれをやっていると、教育課程の研究や論文の時間がとれなくなってしまいます。なので、目標としては半分の時間で同じ結果を出すことが求められました。

最初の1年は私も8時間練習をしていたのですが、教授法でレッスン方法を学ぶことで自分自身のレッスン力もつきました。今では4時間の練習でも8時間練習していたとき以上に上達している実感があります。

将来的に大学院を卒業してピアノ教育者になっても、自分の練習時間を確保できるようになるのがこの課程の主旨でもあるので、芸術課程と教育課程は相乗効果としていい影響があります。

ーー なるほど。授業内容が相互に関係しているのですね。具体的な授業内容を教えていただけますか?

芸術課程の実技の授業では、日本の音大と同じように一対一でピアノの個人レッスンを受けます。他にもう一つ楽器を選択するのですが、私はチェンバロのレッスンを受けています。

一方、教育課程のピアノ教授法の授業は講義スタイルで、討論したり模擬レッスンを行ったりします。 音楽学の講義を必修で4つ選べるのですが、私は中でも音楽心理学の授業が印象に残っています。

ドイツで学ぶ音楽心理学とは

ーー 音楽心理学とはどのような学問なのですか?

音楽をやっていれば、だれもが本番前の緊張や不安を経験すると思うのですが、私はあがり症やステージ恐怖症とどのように付き合うかについて勉強しています。これらの症状を音楽心理学という枠組みで捉えたことがなかったので、科学的に見つめることが新鮮でした。

私自身もコンサート前にポジティブワードを言い聞かせたり、自立訓練法を使ってリラックスすることで効率的に時間を使えるようになりました。修士論文も、メンタルトレーニングにおける音楽の活用法というテーマで書こうと考えています。

ーー どんな人にハレ大学をお勧めしたいですか?

ピアノのレッスン能力を高めたい人にお勧めしたいです。

ただ、語学に関しては相当覚悟しないといけないと思います。文章を書く量も多いですし、人前で30〜40分レッスンをすることも多いので、その覚悟は必要です。大学から求められる語学のレベルもC1レベル(大学や高等機関で授業を理解できるレベル)で、かなり専門的なところもなんなくこなせるレベルが求められます。

編集部コメント

日本人がいない環境の中で、両立の大変なカリキュラムに挑みながらも「ハレ大学を選んで本当によかった」と満面の笑みでお話してくださった大木さんが印象的でした。自分の学びたいことを勉強できる学校選びが、留学成功の一歩だと思いました。

今回紹介したドイツのハレ大学の口コミ

名称 Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg(ハレ=ヴィッテンベルク大学)
国・都市 ドイツ  / Halle
学校形態 大学 大学院
住所 Franckeplatz 1, 06110 Halle (Saale), ドイツ
電話番号 +49 345 5527252
公式サイト http://www.uni-halle.de/
口コミサイト https://ablogg.jp/school/7099/

インタビュアー

安彦海咲(あびこみさき)/神田外語大学4年/アブログインターン生

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