スポンサーリンク

韓国で通訳・翻訳をアカデミックに学ぶーー啓明大学校の留学経験者インタビュー

12779

韓国の大邱市にある啓明大学院通・翻訳学科修士に通う長谷川睦実さんのインタビュー。第2弾では現在の留学生活、通訳・翻訳の授業内容や留学のきっかけについてお話をお伺いしました。

韓国の大邱(テグ)広域市にある啓明(ケミョン)大学院通・翻訳学科修士課程に通う「長谷川睦実(はせがわ むつみ)」さん。韓国政府招聘奨学生として大学院留学をしている長谷川さんに、大学院での日韓、韓日通・翻訳の学びをお聞きしました。

ゼミの授業が留学のきっかけ

(卒業制作として韓国語の本を1冊翻訳)

ーー そもそも、韓国語に興味を持ったきっかけはなんですか?

韓国語に興味を持ったきっかけは、ありがちですがK-POPにハマり、カラオケで韓国語の歌を歌えるようになりたい、歌手と話せるようになりたいと思ったことでした。大学3年生から第二外国語の授業で韓国語を受講して、そこから本格的に勉強を始めました。

ーー そこから、留学を決意するまではどのような経緯があったのですか?

高校卒業後、日本の大学で経営学を専攻していたのですが、先ほどお話したように大学3年生から第二外国語の授業を受講し始めました。4年生まではその大学に通っていたのですが、もっと本格的に韓国語を学びたいと思い編入を決意し、2年間の休学後、韓国語学科のある大学に3年次時編入をしました。休学中の2年間は、韓国ドラマを見て語学の勉強をするなど独学を続けていました。

編入後は韓国語学科長の教授のゼミに入り、韓国語から日本語への翻訳について学びました。実は、編入前に韓国の大学への入学も考えたのですが、当時はまだ自分の語学力に自信が持てず、もう少し日本で韓国語を学ぼうと決意しました。

ーー 編入後の大学でのゼミが通訳・翻訳に興味を持ったきっかけだったのでしょうか?

はい、このゼミをきっかけに通訳・翻訳に興味を持ちました。学科長の翻訳ゼミは厳しいことで有名だったのですが、語学としての韓国語だけでなく、翻訳者のマインドや実践的な翻訳スキルを学ぶことができました。編入生ということもあり、3年次は1年生並みに授業をとっていたので大変でしたが、このゼミに入って良かったと思っています。

通訳・翻訳の需要はなくならない

(卒業制作にて扱った韓国近代文)

ーー 大学編入を経て、韓国の大学院へ進学していらっしゃる長谷川さんですが、大学卒業後の就職を考えたことはありましたか?

実は、私も大学4年生の頃少しの期間就活をしたんです。でも、あるベンチャー企業の説明会で「今ある職業の大半がなくなる」「残るのはエンジニアだ」という主旨の話を聞いて、それでも通訳士や翻訳家はなくならないのではないかと思いました。最近は自動翻訳の性能も上がっていますが、特に韓国語に関してはまだまだ正確とは言えません。少なくとも、私が生きている間は通訳翻訳の需要はあると考えました。就職活動を通して人より時間はかかっても、もう少し自分に投資して勉強したいと思いました。

また、卒業制作で本を一冊翻訳したのですが、制作に集中して取り組みたいという強い気持ちもありました。今思えば、それを言い訳にしていたのかもしれませんが、「就活ごときにやりたいことをつぶされてたまるか!」という気持ちが強かったです。

ーー 現在はどのような留学生活を送っていますか?

大学院では1学期に9単位(3科目)まで履修可能で、27単位取得で韓国の大学院でいう「修了」になりますが、在籍人数が少なく一定数の履修者がいないと開講できないため、結局4学期の間フル単で聴講もしていました。

現在は、2時間半の授業が3コマあり、週に2日程度学校に行くスケジュールです。学部生には「なんて楽なんだ!」と思われるかもしれませんが、論文の執筆に向けて先行研究や研究の進行状況を毎週発表するゼミ形式の授業があり、とても大変です。この授業での発表のために、1週間の時間をかけて準備をしています。韓国では学部生はほとんど論文を書かずに卒業できるので、韓国人の学生は書き方を知らない人が多いです。そのため、初めは論文の書き方から学びました。

スポンサーリンク

日韓ニュースからグローバルイシューまで扱う授業

(初めての同時通訳の授業。左手前が長谷川さん。)

ーー 通訳・翻訳の授業ではどんなことを学んでますか?

翻訳の授業は日本語学科の専任教授である学科長が翻訳の授業を受け持っていたのですが、主に近代文学作品や慣用句などの短文~中長文の日韓翻訳をやっていました。リクエストをすれば韓日もやってくれると思いますが、日本語が専門であって日本語翻訳の専門ではないためか自身の母語である韓国語に替える方をメインに見てもらってました。

通訳は、外部講師を呼んで授業をしていました。私が1~3学期のときは釜山外国語大学校の通翻訳大学院専任教授が、4学期のときは韓国外国語大学校の通翻訳大学院講師(同大学院博士課程修了)が来て毎学期1~2科目を担当していました。

通訳の授業ではこれまで原文音声を聞いてメモを取り、発話が終わってから該当部分の訳出しをする日韓と韓日の逐次通訳と、発話とほぼ同時にその場で訳出しする日韓および韓日同時通訳、原稿を目で読みながら同時に口頭で訳すサイトトランスレーションを学びました。

他にも、討論の授業では先生が進行と質問役となり、一つの議題に対して賛成と反対に分かれて、韓国人は日本語、日本人は韓国語で発言したり、ビジネス通訳の授業では企業の取引メールや食事会で行われた会話の録音データを元に適切な訳を考えました。

ーー 具体的にはどんなシーンを想定した通訳翻訳が多かったですか?

通訳では時事ネタやグローバルイシューを扱いました。例えば、人工知能、東京モーターショー、企業の不祥事など、その時に日本や韓国でニュースになったトピックが多かったです。グローバルイシューでは中国経済の台頭と中国人観光客の爆買い、地球温暖化、アメリカの金利政策、大統領選が取り上げられました。また、日韓共通のトピックとして北朝鮮問題、韓国の就職難と日本の売り手市場、少子化問題など幅広く扱い、形態もニュース記事、インタビュー文、演説文など様々です。

どれもそれぞれ面白かったですし、毎時間失敗の繰り返しではありましたが、1学期が終わる頃には自分自身で確実にスキルアップしたと感じ取れるくらい濃い授業内容でした。特に啓明のような地方大学の場合、通訳・翻訳を専門的に指導できる先生が周りにいないので、専門機関から先生を招いてみっちり指導を受けたという点に関しては「充分もとをとった!」と思います。

ちなみに、ソウルなどには通翻訳大学院入試のための予備校も多数あるため、単純に通翻訳の勉強がやりたければそちらに通うという手もあります。

編集部コメント

通訳・翻訳というプロフェッショナルな知識やスキルを実際にその国で学べるのは有意義だと思いました。例え、人より時間がかかったとしても自分のやりたいことを貫いて、編入や大学院留学を決めた意志の強さこそが、留学先の学びにも繋がっているように感じました。

今回紹介した啓明大学の口コミ

名称 계명대학교(啓明大学校)
国・都市 韓国  / 大邱
学校形態 大学 大学院
住所 大韓民国 대구광역시 달서구 신당동 1000
電話番号 +82 53-580-5114
公式サイト http://www.kmu.ac.kr/
口コミサイト https://ablogg.jp/school/11536/

インタビュアー

安彦海咲(あびこみさき)/神田外語大学4年/アブログインターン生

この記事に関するキーワード

  • インタビュー
  • 韓国語
  • 계명대학교
  • K-POP