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グローバル化は日本の文化を崩壊させるのか?真のグローバル化について考える
ちまたでは「グローバル化によって、日本独自の文化も失われる危機」などとささやかれてはいますが、果たして本当なのでしょうか?グローバル化が進み、インターネットも普及し、海外との情報交換もスピーディーに行われる時代になりました。今回は、日本の伝統を継承している外国人の話を通して、グローバル化と日本文化との関わり合いの話をしてみたいと思います。
global(グローバル)とは
三省堂の辞書の説明によると、global(グローバル)は「地球規模の」「球状の」などを表す英語から来ています。つまり、国の境界線を取り払った、一つの地球という視点での考え方のようです。
インターナショナルとは何が違うのか。international(インターナショナル)は「~の間、相互」を示すインター(inter-)と「国、民族、国家」などを示すナショナル(national)から成り立っているように、国という組織の間、つまり「国家間」という含みがあります。
グローバル化 ≠ アメリカナイズ
一部、日本でも勘違いされている部分もあるようですが、「グローバル化」は決してアメリカナイズする事ではありません。また、単に英語を習得することがグローバル化ではありません。
フランスでは「グローバリゼーション」という言葉は敬遠され、フランス語の「モンディアリザシオン(mondialisation)」という言葉が好まれています。「グローバリゼーション」は、成長理論と市場原理を優先する新自由主義国アメリカゼーションであり、多国籍企業を中心とした経済的国際化の認識があるようです。
私がこの記事で用いている「グローバル化」とは、コスモポリタン思想に則ったグローバル化(世界化)です。
後継者不足の日本の伝統工芸
日本には何百年も受け継がれてきた伝統工芸が数多くあります。あの有名な輪島塗も後継者不足に悩まされている現状です。それはひとえに、需要そのものがなくなってきている現実があります。
手頃に購入できるお洒落で現代的な器や皿などが数多く出回るようになって、伝統工芸の需要自体がなくなり、産業も衰退していきます。さらには生活様式も和式の畳での生活から、テーブルでの洋式スタイルや洋風住宅も増えてきました。
工業技術の向上によって大量生産が可能となった今では、日用品は安く実用性があれば十分だと消費者が考えるのは当然であり、非難はできません。
グローバル化による灯台もと暗し
グローバル化が進み、日本の企業も海外に進出し始め、海外への留学者や就学者も年々増えつつあります。特に日本人はハイテク技術やファッションの流行などには非常に敏感であり、いち早く海外のブランドやトレンドに注目しています。
グローバル化が進んだことにより、逆に多くの日本の情報も海外に伝わるようになりました。その結果、日本の文化に興味を持つ外国人が非常に増えてきたのです。なんとも皮肉な話です。
グローバル化とともに、日本人は海外に向けてライトを照らしだし、外国人が日本にスポットライトを向けだしたのです。日本人が忘れていた日本の文化や熟練した工芸を、海外の方々が絶賛し賛辞する。まさしくグローバル化によって発生した「灯台もと暗し」の状況がおきています。
海外に渡った日本の伝統技術
日本の伝統技術に魅了されたカナダ人の話をご紹介します。名前はモーリー・カーターさん。彼は400年以上続いた「吉本刃物(吉本鍛冶屋)」で修業を重ね、なんと17代目の吉本の名を襲名されたのです。
日本のテレビでも紹介されたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。なんでも、司馬遼太郎のエッセイ「街道をゆく」の中の「肥薩のみち」で、15代目吉本と司馬遼太郎が話をしているシーンが残っているほどの老舗の鍛冶屋さんらしいです。
モーリー・カーター(Murray Carter)さんプロフィール
- カナダのノヴァスコシア州ハリファックス出身、今年45歳(2015現在)
- 高校生の時に空手の修行で熊本に来日
- 観光中に偶然にも「肥後正宗」の登録商標を持つ「吉本刃物店」の刀や包丁に見入ってしまう
- そのまま、16代目である酒本康幸さんに弟子を志願し技術を学ぶ
- 6年後に、17代目を継承。その後も10数年間に渡り修業を続ける
- 2001年にはアメリカの鍛冶職人組合から名匠(Mastersmith)の称号を授与
- 彼がつくるナイフや和包丁が海外で話題となり、2005年、アメリカに移民
- 現在ではナイフメーカー「Carter」として作品を制作
- 趣味はセスナ操縦
カーターさんのショップ『Carter Cutlery』のHP: http://www.cartercutlery.com/
今では、世界中で和包丁が見直され、各国の料理人からのオーダーが殺到。なんとオバマ大統領のお抱え料理人も彼が作った包丁を愛用されているらしいです。
日本人の心も継承している
彼のアメリカの仕事場には、彼自身が日本語で書いた色々な名言が壁に貼られています。彼は、『日本人の職人の仕事は丁寧であり、日本人が持つ「こだわり」こそが海外で評価されている点である』と言います。
彼が和包丁にこだわり続けるのは、「彼の包丁を使用することで料理が楽しくなった」など愛用者からの多くのメッセージがあるからこそで、そこに作り手の喜びがあるからだと語っています。
名刀「肥後正宗」を生んだ「吉本刃物店」の17代目なのですが、彼は日本刀は作らない方針です。「日本刀は人を斬るためのものであり、そんな反応を見たくて職人になったわけではない」と断言されてます。
日本で和包丁と出会い、日本流の丁寧な仕事で素晴らしい和包丁を作り続けることが彼の生涯であり、日本の伝統から生まれた和包丁を世界中に広めていく使命感のもと、新たな継承者の教育にもあたっています。
日本のテレビ番組で紹介されたカーターさん
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日本文化に興味を持つ外国人が続出
私は現在、フィリピンのセブで生活しているのですが、好んで視聴している日本のテレビ番組があります。某テレビ局の「Youは〇〇〇〇日本へ」という番組です。
この番組が素晴らしいのは、外国人の視点から見た日本を知れる点です。成田空港に訪れる多くの外国人の方々が、日本の文化に興味を持って訪日しておられる事がわかりました。
外国人が興味を持つ日本文化
- 日本の古武術
- 日本の盆栽
- 日本のお茶
- 日本の着物
- 日本の建築
- 日本の祭り
- 日本酒
などに興味を持って訪日されている方々が、我々日本人が感じている以上に多いことに驚きです。
グローバル化は日本文化を守る
私は、グローバル化が日本の文化を崩壊させるのかと問われれば、むしろ逆なのではと思います。カーターさんのように日本の伝統工芸を継承されている外国人は、日本人の心もちゃんと継承されています。
盆栽なども実は海外で人気があります。高松で開かれる盆栽大会では1000人以上の海外からのバイヤーがつめかけ、フランスで開かれた展示会では高値で取引され、イタリアのミラノには年商3億円を超える盆栽卸業者もいるらしいのです。
海外では日本人の長寿の理由の1つとして緑茶を飲む習慣が紹介され、緑茶もブームらしいです。スターバックスもお茶専門店「ティーバナ(TEAVANA)」を2012年に買収し、全米で続々と出店しています。
国内各地の地方自治体が、衰退する日本の伝統工芸を守る為に、世界に向けて情報を発信し観光化する計画を積極的に行っています。
和の文化を海外へ
私が小学生の頃は、ハワイに行くことさえも夢であった時代でしたが、これからは地球上での移動がもっと盛んになる時代かと思います。これから海外に留学に行かれる方もどんどん増えてくるかと思います。
海外では日本人が想像している以上に、日本の文化や伝統といった異文化に対し興味を持ってらっしゃる方々が大勢います。なにかと海外ではパーティーなどの場も多いですが、これを利用しない手はありません。
日本人女性がパーティーの場で着物姿を装うイメージがありましたが、最近では男性も増えているらしいです。和服姿で注目され、それがきっかけで会話がはずむケースも多く、和服を持参して海外に赴かれる方も増えてきているらしいです。日本から緑茶などを持参して、ティーパーティを主催したら好評を得るかもしれません。
まとめ
外の世界の文化を知る前に、まず自分を取り巻く内側の世界の文化を熟知しておくことも大事だと思います。なにも西欧文化を受け入れるばかりが、グローバル化ではないのです。
日本で発祥した相撲も、今では外国人の存在はさして不思議な光景ではありません。人種はさまざまでも、日本の格式あるルールに則って礼儀も重んじるられる競技であるのは変わりません。
日本人がサッカーをするのも不思議な事でもありませんし、アメリカ人が柔道をやってもいいのです。地球上に存在する色々な文化がバランスよく多様化されることこそが、真のグローバル化ではないでしょうか。