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残業は厳禁?日本と異なるドイツの労働事情5選

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「サービス残業や休日出勤なんて海外じゃあり得ない!」などと、何かと比較されることの多い海外の労働事情ですが、実際のところはどうなのでしょうか。ここでは筆者の住むドイツの労働事情について、日本と異なる点をご紹介します。

1.融通のきく労働時間

ドイツでは、週の労働時間が原則的に35時間までと法律で規制されていますが、この35時間を自由に分配することができる制度があります。それは、近年、一部の日本の企業でも導入が進んでいる「コアタイム(Kernarbeitszeit)」と「フレックスタイム制(Gleitzeit)」です。このふたつの制度によって、ドイツの労働者は大きな利益を受けることができます。

コアタイム(Kernarbeitszeit)

「コアタイム(Kernarbeitszeit)」とは、必ず勤務しなくてはならない時間帯のことです。この時間の前後で、契約時間より遅刻、または早退することができます。

コアタイムの時間帯は会社によって異なりますが、大体は10:00〜15:00の間で設定されているところが多いので、早起きの習慣を持つ多くのドイツ人は7:00から出勤し、15:00に退社する人が多いです。

したがって、午後3時になると事務所は開いているものの社員が少なく、要件などがあれば後日まで延ばされてしまう場合が多いです。

フレックスタイム制(Gleitzeit)

もうひとつの制度は「Gleitzeit(フレックスタイム制)」というものです。これは、社員が自分の労働時間を自由に調整することができる制度です。

例えば、もし1週間のうち、どこか1日休みたい場合、その日の労働時間を他の日に分配して働くことができます。例えば、週35時間の労働契約を持つ場合、月曜日から木曜日まで35時間を出社していれば、金曜日は無条件で会社を休むことができるのです。

2.年休は100%強制消化

日本の場合、年次有給休暇(年休)は急な病気などの際に必要となるので、数日分は残しておくのが一般的ですが、ドイツでは、日本とは全然違う制度になっています。

まず、ドイツの年休は法律上では最低25日と設定されています。とはいえ、ギリギリのラインで決めるのは会社にとって違法寸前と同然なので、厳しい所では27日、大手一流企業では30日から35日という範囲になっています。

しかも、年休はどの企業においても、その年度に強制的に完全消化することになっています。

つまり、もし30日の年休を持つ社員がその年に年休を1日も使っていない場合、その年の11月中旬頃からは出勤厳禁になります。なぜなら、年休には週末は計上されずに平日のみ数えられるからです。

かつてドイツの大手企業に勤務していた筆者のアジア系の友人は年休を使わず貯めていました。しかし、12月になると、部長から「どうかお願いだから年明けまでもう出勤しないでくれ!」と、逆に休むことを頼まれたのです。

ドイツの労働法では年休の使用に関しては厳しく、会社側としても、ほぼ強制と言えるほど、社員に年休を取らせるようにしています。

3.完璧な女性保護政策

日本でよく耳にする話ですが、労働法上、妊娠または出産した女性に対して解雇はできないと定められていますが、女性はいったん妊娠して出産に臨むと、会社側や世間体などからのプレッシャーを受けて、自ら仕事を辞めざるを得ないケースは少なくありません。

もし同様のことがドイツで起これば、会社全体が裁判に巻き込まれる一大事件になります。

ドイツでは「Mutterschutz(筆者訳:母親保護)」という、妊娠または出産した女性労働者の権利を守るための法律があり、この中で、女性は妊娠または出産後も、職場における平等な権利を保つことがうたわれています。

この中で、女性社員は妊娠している場合、会社側はいかなる理由でも、この社員を解雇することができません。もし妊婦または母親の女性社員を解雇すれば、その女性は弁護士を雇わなくても裁判に勝つことができると言われており、会社側には勝ち目はないのです。

また、2018年1月から、この法律の範囲は拡大しました。元々はドイツの企業で勤める女性のみを対象としましたが、女性のインターンシップ生、見習生、または大学生にも、この法律が適用されることになったのです。

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4.労働組合の存在が強い

日本で会社勤めをしている場合、給料やキャリアアップなどのため、多くの人たちが昇進を目指して一生懸命頑張ります。しかし、驚くことにドイツ人はみんな「上司になるなんて、頼むから勘弁してくれ!」と言うのです。何故なら、ドイツの会社では、労働組合の存在があまりにも大きいからです。

例えば、上司が部下の社員を注意した際、それが必要以上の怒りだと判断されると、すぐに労働組合が飛んできて、その上司の仕事ぶりや社員に対する態度など、あらゆることに関して調査が入ります。下手すると、その上司は起訴される可能性もあります。

さらに、仕事の様子だけではなく、社員は自由に休みを取れたかどうか、社員たち前年度の年休は完全消化できたかどうか、それらは全部監察役の仕事です。これが原因で、筆者の友人は年休がまだ残っていたため、出勤をしないようにと上司に頼まれたのでした。

したがって、ドイツの上司には、たまには部下のわがままを飲み込みながら、労働組合の監察役の対応もしっかりとしておく必要があります。

5.新卒の平均年収が高い

以前、筆者は日本で働いている同期の仲間に日本の給料の事情について聞いたことがありますが、特に東京などの大都市で勤める場合、手取りだけではやはりきつくて、残業などをして、やっと生活を賄えるぐらいに達成できる、と言われましたが、ドイツで働く場合、給料はどうでしょう?

ドイツのFrankfurt Allgemeine紙とコンサルティング会社のGehalt.deは2016年の新卒学生の平均年収に関するアンケート調査を行い、このような結果が出ました。

2016年の新卒の新入社員の平均年収は、2015年の平均より700ユーロ(約8万円)ほど上がり、4万5千400ユーロ(約550万円)でした。この中には「Sonderzahlung」というボーナスやさまざまな手当も含まれています。

もちろん「新入社員」と言っても、職種によって収入も変わります。ドイツの伝統的な高収入職種は、理工系の職業が多く「Informatik(情報システム)」の部門では、平均年収は5万ユーロ(600万円)に達しています。それと同じぐらいの額だとIngenier(エンジニア)という職業も挙げられます。

参考リンク

まとめ

日本と異なるドイツの労働事情について、コアタイムやフレックスタイムなどの融通の効く労働時間、年休が25日〜30日あり、必ず消化しないといけないこと、女性労働者の権利が法律で守られていること、労働組合の存在が強いこと、新卒の平均年収が高いことについてご紹介しました。

更に、この記事を執筆している最中、ドイツ最大級の労働組合「IG Metal」がストライキを起こし、家族の介護や育児のため、労働者の給料額を保ったまま、2年間の間の労働時間を週28時間まで減らす要求を行い、経営者団体と合意した ニュース が入ってきました。やはり、日本と比べてドイツでは労働者の権利が守られている印象を筆者は受けます。

労働条件以外にも、 ドイツ人は拍手をしない!?日本人が知らないドイツ人の6つの慣習ドイツあるある?ドイツ生活でよくあるトラブル4選 などの記事では日本と異なるドイツの文化についてご紹介していますので、ドイツに滞在される方の参考になれば幸いです。

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