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ベジタリアンと民族・宗教・思想とは?多様性にあふれる社会で暮らすこと

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私は10年以上アメリカで生活をしていますが、身近にあって注意が必要なことのひとつに、「ベジタリアン」などの食事制限があります。別に他人が何を食べようと、雑食性の私は気にしないのですが、日本人の描く「菜食主義」とはちょっと様相が違うので、今回はそれについて書こうと思います。

Vegetarian(ベジタリアン)とは?

まず言葉の意味合いについて注釈が必要です。アメリカで「Vegetarian」といった場合、野菜だけを食べる人ではなく、牛肉や豚肉といった「Red Meat」以外の肉を食べる人たちのことを指す場合があるということです(よって魚や鳥は食べる場合が多い)。

またベジタリアンの中の人たちには、文字通り、一切の肉を食べない方もおり、そういった方々は肉以外の野菜とチーズ、卵を召し上がることになります。くわえて、純粋に動物質のものも食べない方は「Vegan」といい、この場合チーズや卵も食べないことになります。

友人からの強烈な批判

留学してから私は時折、友人たちを呼んでアジア料理パーティーを開くことがございました。その際、問題になったのはベジタリアンの存在です。当時はベジタリアンといっても色々な種類のベジタリアンがいるとは知らず、ある友人が私を強烈に批判し始めたことに驚きました。

曰く、彼女は「人間は悪いものを食べ過ぎている。私は体にいいものしか食べない」ためにベジタリアンになったそうで、私の料理がお気に召さない様子。アジア料理では肉野菜を一緒に料理する傾向がありますし、私は牛肉豚肉鶏肉魚を食べる雑食主義の人間です。

私は黙って批判を聞いておりましたが、解せないのは彼女の体型です。私よりはるかに巨大で、「健康に気をつけている」にしては失礼ながら「?」な体型です。相手が女性ですので、女性の体型を指摘するわけにはいかず、私は黙って相手の強烈な言い分に耳を傾けるほかありませんでした。

民族・宗教・思想と食べ物

それ以来、周りの人が何を食べるのか食べないのか、注意を払うきっかけになったのは幸いです。在米生活が長くなるにつれ、色々な民族、宗教、思想が集うアメリカでは、食べ物の制約のバラエティが日本と比べて非常に多様なことが分かって来ました。簡単に挙げてみても、

Vegetarian

ベジタリアンといっても牛肉、豚肉を食べないだけの場合もある。よって寿司を好む自称「Vegetarian」も多い。もしかしたら「肉」を一切食べないタイプのベジタリアンの方が少ないかもしれない。

Vegan

一切の動物質のものを食さない。チーズ、卵も不可。

ユダヤ教徒

豚肉は禁忌であり、牛肉もユダヤ教の儀式にのっとって処理されたもの(KOSHERという)以外は禁忌。うろこで覆われ、ひれがある魚のみ可。魚と卵を除く動物から得られた食品と乳や乳製品を食べ合わせることもダメ。

イスラム教徒

ご存知、豚肉禁止。

ヒンドゥー教徒

牛が神聖な動物であり、菜食主義者が多い。

といった具合に非常に多様性に富んでいます。
くわえて個人差があり、私のユダヤ人の友人は厳格にユダヤ教の教えを生活に取り入れておらず、私と寿司を食した後、ミルク入りのコーヒーを飲んでおりました。本来なら「鰻」が入っていたので、ミルクと魚以外の食品の食い合せは問題なるはずですが、そこまで気にしないとのこと。

さらに、個人の好き嫌い、アレルギーの有無などもありますので、結構ややこしく、これから海外でパーティーを開かれる方は招待する際、客人が何を食べるか、何が食べられないのかを尋ねてから、献立を決めることをお勧めします。

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騒動になったケースも

たかが食べ物とはいえ、戒律や主義、思想が違うと、騒動の引き金になり得ます。アメリカでは、マクドナルドのフライドポテト(英語ではFrench Fries)に牛肉からのフレーバーが使われているということで、訴訟を起こされています。(参照: McDonald's Settles Beef Over Fries

味の素も製造過程で豚の酵素を使用していたため、インドネシアで事件にまで発展したことは、ご存じの方も多いかと思います。(参照: ウィキペディア「味の素追放事件」

自分では大したことがないと思っても、食べる当人にとっては大事であることが多いので気をつけたいところです。

私の聞いた話では、厳格なベジタリアンの友人に、日本のカレールーで作った「野菜」カレーを食べさせたところ、後でルーに牛脂が使われていた事がわかり、トラブルになったという話を聞いたことがあります。

ベジタリアンに対する所感

正直に申し上げると、私はベジタリアンに完全に賛同しているわけでもありません。私がベジタリアンの方と会った時、引っかかるのが「健康のため」に菜食主義になったという言葉を聞く時です。

子供の頃から、色々なものを満遍なく食べるように育てられたせいか、それとも意地汚い食生活を送っているためか、どうも私個人としては納得のいかない理由に響くのです。

が、気の弱い私ゆえに、あまり意義を唱えたことはございません。中には、「動物などの生き物を殺すのはよくないから」という理由を掲げる方もおり、植物は生き物じゃないのか、という疑問を私は口まで出かかりながら、飲み込むことになります。

なぜアメリカにベジタリアンが多いのか

よく考えてみると、日本人の食生活が結構、菜食主義に近いように思います。朝、パンとコーヒーで朝食を済まし、お昼は近くの日本食レストランで寿司ランチ。夕方は手早く、ざる蕎麦を茹でで済ましたりすると、ほとんどベジタリアンでして、動物質のものは寿司ネタと蕎麦汁の鰹出汁のみ、ということになってしまいます。

なぜここまでベジタリアンの人がアメリカに多いのか、ひとつの謎でしたが、就職してからアメリカ人の男性と結婚した日本人の女性たちと話していて、謎が解けてきました。

アメリカ人の男性が家事をするといっても、夕食はBBQが定番である。よって、料理方法が焼く以外になく、ステーキが最大のご馳走。私の同僚のアメリカ人の旦那さんは冬以外の季節は毎日でもBBQをやりたがるらしく、放っておくと毎日のように牛肉が食卓に上るそうです。

料理が苦手な彼女ですが、旦那さんの肉攻撃を交わすため仕方なく料理をすることもあるそうで、肉が多すぎるためにベジタリアンが増えるのではないかという推測に至りました。事実、複数のベジタリアンの女の子から以前、ベジタリアンになった理由として

「毎日、食卓に牛肉が溢れていたから、イヤになった」

という言葉を聞いたことがあり、すき焼きがご馳走だった私の家庭とはだいぶ趣が違うことに驚いたものです。実際、Costcoで大量に牛肉を買っていく家族連れのお父さんが多いですから、一般家庭の牛肉消費量は日本よりはるかに多いと推測しています。

これから留学・海外生活する人へ

私たちは皆、食物連鎖の一端を担っています。私たちは生きている限り、他の生命を踏み台にして自分の命を繋いでいることに、民族や言葉、文化が違えど変わりはありません。

ただし、その繋ぎ方に多様性があり、私は海外に出てその多様性に驚くばかりです。日本人が沢山の魚を食べるのは間違いなく、海に四方囲まれた島国だからでございましょう。他の民族が特定の動物を食べなかったりする背景には、地理的、歴史的、宗教的要因があるからに違いありません。

この記事が、留学や海外体験が他人への理解のきっかけになることをお祈りしております。

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