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NYで国際結婚!するも妊活&不妊治療で苦労した話Vol.3
ある日突然、30代前半という若さで、ニューヨークで不妊治療を開始することになり、日々絶望の淵に立たされながらも、決して希望を捨てずに、妊活に励んだ筆者の妊娠に至るまでの体験談です。ここでは実際に行った治療の様子と結果についてご紹介します。
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日本とアメリカの不妊治療の違いとは?
本編に進む前に、まずは日本とアメリカの不妊治療の違いについて幾つか説明します。
人工授精の名称の違い
「人工授精」は、日本では略して「AIH(Artificial Insemination With Husband’s Semen)」と呼ばれますが、アメリカでは、AIHと言っても通じなく、一般的に「IUI(Intrauterine Insemination)」と呼ばれています。
この呼び名の違いについて、日本では「旦那さんの精子を体内に受精する」という考えがあるため、AIHの「H」が「Husband(旦那さん)」となっていますが、アメリカでは精子を提供する人が必ずしも旦那さんであるとは限らず、結婚していないカップルやパートナーが同性のレズビアンカップルが精子ドナーを使っている場合などがあるため、差別表現にならないよう「IUI」という中立的なニュアンスを持った用語が使用されています。
不妊治療の工程の違い
日本で不妊治療を行う場合「タイミング療法→人工授精→体外・顕微受精」の3段階を踏むことが多いですが、アメリカの不妊クリニックでは基本的に、タイミング療法をスキップし、人工授精からスタートする場合が多いようです。
また、日本の場合は人工授精から保険が適用外になるようですが、アメリカは日本のように国民保険制度がない代わりに、患者側の保険のタイプによって、不妊治療が保険によってどれだけカバーされるかが変わってきます。
保険の内容によってカバーできる内容が異なる
このため、IUI(人工授精)とIVF(体外受精)両方がカバーされる保険、もしくはIUIのみカバーされる保険、もしくはあいにく両方ともカバーされない保険を持っている人など、さまざまです。また、年齢的な制限がある場合も多く、45歳以上の患者の場合は、不妊治療費用が全て保険適用外となってしまうようです。
ちなみに筆者は、配偶者として旦那と同じ保険に入っていますが、私たち夫婦の保険は、人工授精の場合は、血液、超音波検査のためのCo Pay(自己負担額)を除いた治療費を、全部Unlimited(無制限)でカバーしてくれるタイプでした。
そして、体外受精の場合は、上限で3サイクルまで、全体の治療費の75%までカバーしてくれることが分かりました。つまり、IVFをした場合、治療費の残りの25%は自己負担ということになります。
また、IUIからすぐにIVFへステップアップできるシステムではなく、年齢が35歳以上の場合は、IUIを少なくとも3回やってダメだった場合、そして35歳以下の場合は、少なくともIUIを6回トライしないと、IVFの費用を保険でカバーしてくれないことが判明しました。
このような保険の事情から、仕方なくIUIをまずは6回やるところからスタートしました。6回という数字は数字だけ見ると大した数字に見えないかもしれませんが、生理が1ヶ月に1回しか来ないことを考えると、IUIに6回続けてトライするということは、実に半年もの貴重な時間を無駄にしてしまうこととなります。
もし保険のカバーなしで、全て自己負担で治療するとなると、アメリカでのIVFの1サイクルの治療には少なくとも、1ドルを100円だとして単純計算した場合、1万ドル(100万円以上)か、それ以上の費用がかかるため(通常、日本の3倍以上はします)、その時点ですでに焦りなど葛藤はあったものの、最終的にはとりあえずIUIを6回続けてやってみて、ダメだったら、IVFに進もうというコースを夫婦で選択しました。
6回のIUI(人工授精)を挑戦した結果・・・
心のどこかで6回もIUIをすれば、数を打てば当たるではないけれど、きっと半年以内には妊娠できるだろうという根拠のない自信もあったのですが、日本同様、アメリカでもIUIで妊娠する確率は10〜15%未満であると言われており、2〜3回までのIUIで妊娠しなければ、それ以降は回数を重ねてもほとんど意味がないという虚しい事実も、その時になって初めて知りました。
そしてIUIに6ヶ月間休みを入れることなく連続で挑戦しました。
最後の期待をかけて挑んだ6回目のIUIも、期待むなしく見事に撃沈してしまい、いよいよ高度不妊治療と呼ばれるIVFへステップアップすることを余儀なくされました。IUIをしていた時点で、すでに毎月少なくとも3〜4回は不妊クリニックに足を運び、排卵前の卵胞の状態を知るための血液検査、超音波検査をしていました。
しかしながら、IUIは自宅、もしくは射精室(英語でSperm Collection Room)で採取した旦那の精子を、遠心処理したのち、その精液をそのまま女性の子宮に注入していくため、経済的にも肉体的にも負担が軽い治療法だったため、そこまで負担には感じていませんでした。
そこからいきなり、経済的にも肉体的にも重たい負担がのしかかるIVFへステップアップすることになってしまい、不安でたまりませんでしたが、どうしても子供がほしいので、ここで諦めるわけにはいきません。ようやく保険でIVFを1サイクル75%までカバーしてくれるタイミングになった時点で、いよいよIVF治療がスタートしました。
この時すでに、月日は流れ2019年の2月となっていました。
人生で初めてのIVF(体外受精)に挑戦!
本連載の第2回目の記事 でご紹介した個人経営の不妊クリニックとは馬が合わず、色々不快な思いをしたこともあり、1回目のIUIが失敗に終わった時点で、思いきってマンハッタン内にある大手不妊クリニックに転院しました。
2回目以降のIUIは全てその大手クリニックで行い、最初のIVFも引き続き、転院先の大手クリニックでお世話になることに。幸いにも転院先のクリニックでは担当してくれたアジア系の男性ドクターと馬が合い、毎回とても親切に接してくれていたので安心して治療を受けられました。
さて、治療法がワンパターンしかないIUIと比べて、IVFは治療法がさまざまで、患者によってケースバイケースになるため、まずはどの治療法を選択するか、それを担当ドクターと話し合って決めていきます。
余談ですが、アメリカなので、基本英語での相談となりますが、英語に自信がない場合は、コンサルテーション時に、日本語の通訳を入れてくれるクリニックもあります(この辺の事情については今後の記事で詳しくお伝えしていきます)。
担当ドクターとの話し合いの結果、筆者は、年齢がまだ若いことを考慮して「Mini IVF(低刺激治療)のFresh Embryo Transfer(新鮮胚移植)」コースで体外受精をすることが決まりました。
刺激法には大きく分けて、Mini IVF(低刺激法)とConventional IVF(高刺激法)の2つのタイプがあり、Conventional IVF(高刺激治療)をする場合は、文字通り排卵誘発を促すための自己注射をたくさん打ち、採卵日までに卵の数をたくさん増やす治療法となります。ちなみに、日本では「点鼻薬」と呼ばれる薬もよく使用されるようですが、アメリカでは、点鼻薬を使っている人の話はほとんど聞いたことがありません。
反対に、Mini IVF(低刺激法)とは、排卵誘発のための経口薬と自己注射の使用頻度を必要最低限にとどめ、自然周期にやや近い状態で、少ない数の卵を育てていく治療法のことです。
筆者は年齢の割には低AMH(抗ミュラー管ホルモン)であったため、高刺激をしても採卵時にあまりたくさん卵が取れないというドクターからのアドバイスがあり、Mini IVF(低刺激治療)で行くことになりました。
また、移植にも大きく分けて2つのタイプ、Fresh Embryo Transfer(新鮮胚移植)とFrozen Embryo Transfer(凍結胚移植)があります。Fresh Embryo Transfer(新鮮胚移植)で行く場合は、Fertilized Egg(受精卵)を凍結せずに、ある程度大きくなった段階(筆者のクリニックでは、受精から三日目の時点で、6分割以上になっていることが必須条件でした)で、それを子宮に新鮮な状態のまま移植し、着床を待つという流れになります。
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IVF(体外受精)の経過
こうして、IVFという未知なる世界をなんとなく理解したようで、ちゃんと理解していないような状態の中、治療がスタートしました。採卵前の卵胞の育ちを調べるため、不妊クリニックに通う頻度も以前よりさらに増えていきました。
幸いにも当時筆者はパートタイムで仕事をしていたため、クリニックに通うことが仕事のスケジュールに支障をきたすことはほとんどなかったのですが、フルタイムで仕事をしながら、治療を続けている人たちにとっては、スケジュール調整がとても大変なことだと、その時感じました。
筆者の採卵(2019年3月の半ば)から移植(3月の終わり)までの結果を簡潔にまとめると、以下のようになります。
1.担当ドクターの指示により、最後の人工授精の結果が陰性に終わることを予想して、結果が出る前に、五日間避妊用のピルを一日半粒飲み、初回のIVFに備えて、ホルモンバランスの調子を整えた。
2.次に排卵誘発のための経口薬・自己注射に移る前に、血液検査を行い、結果が良好であることを確認。(この時点でFSH(卵胞刺激ホルモン)レベルが10以下であることが必須条件)
3.その後、まずは経口薬として、Clomid(クロミッド)を5日間1日1粒服用し、同時にGonal Fと呼ばれるペン型の注射器による自己注射(1日1回150の量で4日間打った)もスタート。
ちなみに筆者は自分で注射するのが怖かったため、自分よりも手先が器用な旦那にお願いして、クリニック側から送られてきた注射のビデオ動画を見ながら、毎回注射してもらっていた。
4.卵胞チェックで卵の大きさを確認してもらい、排卵直前になった時点で、採卵日が決定。採卵の結果、卵が4個取れたことを確認。当初の予定では6個取れれば上出来とドクターに言われていたので、採卵数は残念ながら予想を下回る結果に。ちなみに採卵時は局部麻酔だったため、長い針が卵巣に突き刺さる痛みを感じ、かなり苦痛であった。
5.採卵時に取れた卵4つを、今度は採卵と同じ日に射精室で採取した旦那の精子と受精させ、培養士さんが培養ルームで受精卵として育てていった。
ここで、筆者が転院した不妊クリニックでは、精子の質、状態にかかわらず、受精率を上げるため、採卵できた卵の数が少ない患者さんには、IVF(体外受精=培養液の中に精子をふりかけて、卵子と自然に受精させる)よりもさらに上のレベルにあたる、ICSI(顕微受精=細い針を使って、一匹の精子を卵子の中に直接注入する)を費用の上乗せなしで、無料でしてくれる事実が判明。
そのため、筆者らもICSI(顕微受精)によって受精卵が作られました。
6.顕微受精の結果、1つの受精卵がアブノーマルになってしまったため、破棄されることに。残った3つの受精卵を、1つは次回の移植用に凍結に回し、もう2つは今回の新鮮胚移植に回すこととなった。
7.採卵から三日後、新鮮胚移植のため、クリニックのオペ室に再び向かう。移植当日の朝の段階で、3つあった卵は、1つめがCompacting (桑実胚)まで、そして2つめが8分割まで育っていたことが判明。次回用に凍結に回す予定だった3つ目の受精卵は、残念ながら途中で成長を止めてしまったため、その時点で破棄されてしまっていた。
8.日本と違って、アメリカでは、ドクターの判断によって、移植の際に、受精卵を一気に2個戻すことがあり、筆者の場合も2個戻しとなった。移植は10分ほどの短時間で、何の痛みも感じずに無事に終了。
また、その日から、黄体ホルモン補充のための飲み薬(Estradiol)を1日1回と、膣坐薬(Progesterone)を1日2錠夜就寝前に入れるよう指示が。あとは2週間後の血液検査で、着床結果を待つのみとなった。
IVF(体外受精)を行った結果・・・
そして、移植をしてから約2週間後の2019年4月の上旬、クリニック側から結果報告のメールが届きました。信じられないことに、結果はまさかの「陽性」でした。
2個戻したうちの受精卵が、無事に1個着床していました。その時、NYで思いきって不妊治療を始めてから1年になろうとしていたところでした。生まれてはじめて、目にした「陽性反応」という夢のような言葉。
人工授精は6回やっても全部ダメだったのに、まさか初回の体外(顕微)受精でこんな奇跡が起きるなんて・・・
担当ドクターにも、移植時に私の年齢(30代前半)で新鮮胚移植の体外受精で、一発で妊娠する確率は35%であるとはっきり言われていました。だから、こんなすごい奇跡が今までずっと不妊体質であった自分の体に起きたことが、その時はやはりすぐには信じられず、クリニックからの嬉しい結果報告のメールをつい何度も目をこすりながら確認してしまっている自分がいました。
正直なところ、不妊体質を改善するための食事改善や運動などにもあまりそこまで真剣に取り組んでいませんでした。移植後から着床結果が出る2週間の間、なるべくストレスをためずに、睡眠時間をたっぷり確保したり、子宮を温める為に腹巻きを巻いていたりしていましたが、それ以外は不妊治療患者のお手本とは程遠い自分だったから、一発目の体外(顕微)受精で妊娠に至るとは、本当に夢にも思っていませんでした。
そして、治療中も常に横でポジティブに応援してくれていた心優しい旦那も、そのときはとても喜んでくれました。あの日の出来事は今でも忘れることができません。不妊治療は現代医学に頼った治療法ですが、移植後にちゃんと着床してくれるかどうか、その先に関しては、我々人間はまったくコントロールすることができず、そこからはもう神様の領域なんだということ、そして、結果的に、人間の命の尊さについて学べた貴重な経験となりました。
悲しみと悔しさが大半を占めた絶望続きの不妊治療でしたが、最後まで諦めずに、こうして奇跡的に、早い段階で結果を出すことができ、本当によかった!と今は心からそう思っています。
最後に
この記事を執筆している時点(2019年8月上旬)で、妊娠中期の最後の月にあたる、6ヶ月目に入りました。胎動が感じられるようになってからはだいぶメンタル面で落ち着いてきましたが、これからいよいよ妊娠後期に入り、無事に出産する日を迎えるまで、まだまだ不安は消えませんが、いつの日かこの不妊治療のコラム記事を、これから生まれてくる子供と一緒に笑いながら読み返せる時がやってくることを夢見て、今度は「出産」という未知なるゴールに向けて、体調に気をつけながら、残りの妊婦生活をマイペースに過ごしていきたいと思っています。
次回は、自身の体験談をもとに、読者の皆さんの関心が高いと思われる、「NYでの不妊クリニック選び」に関する記事を投稿する予定です。
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