スポンサーリンク
フィリピンでの現地採用までの道のりーーフィリピンのIT系スタートアップで働く30代女性インタビュー
今回の留学経験者インタビューは、現在フィリピンのIT系スタートアップで働く「suni」さん。大学卒業後、日本のIT業界で12年間の社会人経験を経て、33歳にして初めての語学留学。そしてフィリピンでの現地就職を果たしたsuniさんの、留学から海外就職に至ったお話を3回に分けてご紹介します。第二回目の今回はフィリピンで海外就職を果たした経緯についてのお話です。
経済成長率が高いフィリピンで就職することを決意
ーー 東南アジアで就職を考えるになったきっかけは何ですか?
日本で働いていた頃「次は東南アジア」という話をよく聞いていたので、 現地のIT・Web業界やスタートアップにもともと興味がありました。
あとは、日本にこのままいても、誰にでもできるような仕事はどんどん人件費の安い国の人に奪われるだろうし、私と同じスペックで人件費の安い国の人がきたら、今の私には勝てる要素があまりないという危機感もありました。長い人生で考えて「日本で、日本語でしか働けない人生」にリスクを感じるようになったのです。
当時の自分の英語力を考えると「ネイティブレベルの英語」が必要な仕事は無理だろうから、東南アジアの日系企業でローカルを束ねるような仕事なら最初の一歩としてアリかも。また、海外で外国人のマネジメント経験を積んでおくと今後の自分のバリューも上がるだろうという考えがありました。
志望する業界はIT・Web業界でした。もちろん、これまでのキャリアを活かすということもありますが、IT系の職種であれば、世界中どこでも働くことができる可能性を感じていたので。
ーー 「東南アジアで就職」と仰いますが、具体的な国の候補はどのように決めたのでしょうか?
最初はフィリピンとシンガポールの二カ国で検討していました。
フィリピンは2度のセブ留学で得たことや感じたことがあって、漠然と興味がありました。また、英語が第二言語の割には英語を話せる人が多く、それこそタクシーの運転手さんから、スーパーのおばちゃんまで、みんなそれなりに英語ができます。あとフィリピンの経済成長や人口ボーナスを考えると将来性に期待が持てるという点も大きなポイントでした。
一方シンガポールは、「アジアのハブ」「多国籍」「外資のアジアの拠点はシンガポールが多い」と言ったイメージがあり、そこそこ発展している国ということでリスクが少ないようなイメージがあったのがポイントでした。
フィリピンでの就職活動は日本人向けの人材紹介会社を利用
ーー 就職活動はどのようにして進めたのでしょうか?
ネットでフィリピンの求人情報を探しましたがさほど案件がなく、未公開求人は人材紹介会社が持っているだろうと思い、2度目のセブ留学の前に日本で日英両方の履歴書、職務経歴書を用意し、現地にある日本人向けの人材紹介会社を通じて就職活動を進めました。
最初は、留学していたセブで就職できればと思い、セブ周辺での案件を紹介してもらえるよう依頼したのですが、どうやら希望する業界・職種がセブには殆どないということが分かり、首都圏のメトロ・マニラも視野に入れて欲しいと言われました。
次に、セブ留学中にシンガポールに行き人材紹介会社の人と面談を行ったのですが、その際に「シンガポールの労働ビザ発給条件は非常に厳しく、学歴が重要視されるだけでなく、大学での専攻とキャリアの一貫性も問われる」ということと「シンガポールは法律がドラスティックに変わることがあり、労働ビザも毎年どうなるかわからない」と聞きました。
そんなリスク背負ってまでシンガポールにいたいわけじゃなかったので、シンガポールでは就職活動せず、フィリピンに絞ることを決断しました。
その後、メトロ・マニラの会社にアプライし、無事に内定をいただくことができました。
ーー 具体的な仕事内容はどういったものですか?
内定を頂いたのは日本の大手通信会社の現地支店で、SE(システムエンジニア)のポジションでの採用となりました。
本当はコンシューマー向けにWebやアプリで自社サービスを展開する会社で働きたかったのですが当時はそういう求人がまったくなかったので、ちょっと時期が早かったのかなぁと焦りもしましたが、面接で拠点長とお話した際に「SE職といっても現場仕事というよりはフィリピン人社員を束ねる仕事」と伺い、広い意味で同じ業界だしそれならアリかと思ってオファーを受けました。SEとしてのキャリアは10年近く空いていたので非常に不安だったのですが(笑)。
実際に入社したら、プロジェクトマネージャー的なポジションでの業務が主になりました。具体的には社内外での折衝やプロジェクトの進行管理から営業部の提案活動の技術サポート、既存顧客からの要望やトラブル対応、部下の育成など、ありとあらゆる業務をこなしていました。
これまで日本のIT業界でのさまざまな経験が活きたと思っています。
ーー その後転職をされるのですよね?
はい。フィリピンでの就職を果たして1年半。しかも大手企業で手当も厚く、このまましばらく安泰であるのは目に見えていたのですが、思っていた以上にクライアントが日系企業ばかりで「日系企業相手に日本語で働いてたら、日本で働くのと変わらない。フィリピンで働いている意味がない。さぁどうしよう」という疑問が沸々と湧いてきてしまって。
そんなとき、現職「 YOYO 」のCEOから声をかけられました。フィリピンに来た当初からCEOとは友人で、ブログの取材がてらオフィスによく遊びに行っていたんです。
「YOYO」はシンガポールに本社を置きフィリピンに開発拠点を構え、東南アジア新興国のスマートフォン利用者にロックスクリーン広告アプリ「PopSlide」を展開しています。 東南アジア新興国って スマートフォンでのインターネット利用料金が非常に高いので、人々にPopSlideで広告を見てポイントを貯めてもらい、ポイントをインターネット料金に変換してもらう、という仕組みです。
当時は36才。しかも「東南アジアでITスタートアップ」ということで、不安な要素もたくさんありましたが、聞いた感じだと面白そうということと、やっぱりインターネットやアプリ系の仕事をしたいという気持ちが心の中であったのと、盛り上がっている東南アジアのIT系スタートアップでの経験というのは、今後のキャリアでプラスになること、そして、何よりCEOの熱い思いに惹かれたので、思い切って転職することにしたんです。
ーー 現在のお仕事について詳しくお聞かせください。
アンドロイドアプリ開発のプロジェクトマネージャーをしています。フィリピン人、インドネシア人、ベトナム人、インド人、日本人を率いてのアプリ開発のマネジメントがメイン業務ですが、バグのチェックもやりますし、部署関係なく若い子の育成や別の国で働いているカスタマーサポート担当の面倒も見ますし、幅広い業務に携わっています。
スポンサーリンク
フィリピンは人前で説教をすることがタブー
ーー フィリピンで仕事する上で、日本と違う点はありますか?
色々ありますよ(笑)。
まず、フィリピンでは人前で説教をすることがタブーです。これは絶対にやってはいけないです。「人前で恥をかかせる」というのは日本でも常識的にNGですが、フィリピンだと日本以上にダメだそうで、何かあるときは個別に呼び出して話をするようにしています。
逆に、褒める時はみんなの前で敢えて大げさに褒めます。
また、総じてリスク管理、スケジュール管理の概念が日本とは違いますね。日本だと、念には念を重ねてスケジュールを引いて、仕様書を作って、関係部署とも事前に調整を済ませ、「AがダメならB」などとリスク管理をするケースが多かったのですが、こちらでは「とりあえずやってみてダメだったらそのとき考えよう」というノリです。
これは私も人から聞いたのですが、四季の有無が関係しているという話があります。日本を始め四季のある国は、季節に備えて準備を進めますが、東南アジアは乾季と雨季しかないので、そのような準備が文化レベルで存在しないというバックグラウンドが影響しているという説があります。
前者も後者もメリット・デメリットがあるので「どちらが正しい」と断定するつもりはまったくありません。状況に応じて使い分けられるようになればいいと思います。
あと「フィリピンで」というよりは色んな国の人々と一緒に働いていて印象的なのが、同僚にイスラム教のメンバーがいて、ラマダン(断食)の時期になると、日中は食事をしてはいけないので、昼過ぎには疲れはじめて生産性が落ちるんですよね。
イスラム教が国民の90%を占めるインドネシアでは 、ラマダン期間中に限り、ランチを取らない代わりに勤務時間を一時間短くするなどの制度を設ける会社があるくらいなので、先日、私もそれを社内で提案して、そのメンバーに関しては特別に勤務時間を変更するよう対処しました。
編集部コメント
今回はsuniさんの海外就職に関するお話をお聞きしました。海外での現地採用に至った経緯から転職、現地で働く上での日本との違いについてのお話でした。
さて、次回はブロガーとしてsuniさんの活躍やメッセージなどをお伝えします。
インタビュアー
内田隆(うちだたかし) / THE RYUGAKU編集長