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(Mick Baker)rooster

イギリス在住の日本人が見た、イギリスのEU離脱と投票日前後の現地の様子

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イギリスは国民投票によってEU離脱が決まりました。さまざまなデータは既に報道されているので、今回はイギリス在住の筆者が現地で感じたこと、人々の様子などをお伝えします。

EU離脱が決定した日は街中が混乱

イギリスでEU離脱か残留かの国民投票が行われた日、筆者はロンドンから離れたコッツウォルズの小さな街にいました。

いつもは静かなその街に、たくさんの「離脱に是非投票を!」「残留しなければ経済はどうなる?」などのポスターや張り紙が見られ、人々も心なしかソワソワしているように感じました。

街の中心にある一軒の教会が投票所になっており、その晩は夜遅くまで灯りがついていました。また、夕飯に入ったいつものパブは、普段と違い投票に関する速報、開票率などを中継する番組を流しており、人々が真剣にテレビの画面を見つめていました。

私達がディナーを終えホテルに帰った夜遅くの時点では、「残留への票がリードしている」と伝えられ、やはりイギリスはEUに留まるのかと思ったものです。

翌朝、ホテルの部屋にいるとBBCが「離脱への票がリードし、このままいけば確実に離脱派の勝利だろう。」と言うようなニュースを流しました。

朝食に行きたいのですが、テレビから目が離せない内に、離脱がほぼ確定、そしてデイヴィッド・キャメロン首相が辞めるのではという噂が流れ始めたかと思ったら、首相がファースト・レディを伴い緊急会見を始めたのです。

こんなにあっという間に、目の前で世界の歴史が大きく変わる様を見るのが信じられない思いでした。

首相は残留を支持していましたから、いずれは辞めることになるかとは思いましたが、これほど早くとは、彼はスピーチで「私は残留を支持してきた。だから、もはやこの国のリーダーとして適任ではない。的確な次のリーダーが必要だ。」というようなスピーチと共に、10月の保守党大会までに辞任する意向を示しました。

私たちが朝食を摂りにいくと、普段はあまり自分の感情や事を荒立てる意見を表さないイギリスの方が「おはようございます。よく眠られましたか?」と尋ねたレストランスタッフの女性に「ああ、ありがとう、快適だったよ。でも、投票結果にショックでがっかりしているがね。」とはっきり口にし、肩を落としていらっしゃったのです。

それほどにイギリスの人々にとっても、大きな決定であったのです。実際、結果を受けた後は、あちこちで乱暴な言葉や行いで残留、離脱派による小競り合いもみられ、混乱する街の様子をテレビが写し出していました。

EUを離れた場合、イギリス経済への影響、混乱、また安全保障の面など、さまざまな物理的な理由による反対意見が何度も議論されてきたのに、どうして離脱派が勝利したのでしょうか。

離脱派が勝利した理由とは?

イギリスにはわずか10年滞在の筆者ですが、イギリスの人の自国への想い、誇りが今回の結果に現れたのではと思っています。実際に年齢別に見ても離脱に賛成された方は昔のイギリスを知る、ご高齢者の割合が多かったようです。

長く独自の文化、ルールを持ったイギリスが、何かにつけてEUに口出しされたり、決められたり、指図されたり「自国の事は自分達で決めたい」そう願った人の気持ちが、実際の経済への影響、混乱への不安などを上回ったのではと思います。

また、近年EUに参加した国などからの移民が余りに多く、その数は年間20万にも及ぶとのことで、税金などが自国民のためだけに使われない、場合によってはイギリス人より安い賃金で仕事をする人々もいるため、彼らに雇用を奪われるなどの不満もあがっているようです。

また、美しいビクトリアン建築の古い家やフラット(アパート)が印象的なロンドン、あちこちの地域で、ボックスフラットの建築ラッシュが近年起こっています。

増え続ける人々への対策なのでしょうが、筆者も近所でいくつかの工事が始まったり「まさかここに?」と言うような場所にいきなり知らないフラットが建てられていたり、車窓からあちこちに見えるクレーンの多さに驚きを隠せませんでした。

まさに味気ない大型のマンションのようなそれらに嫌悪感を抱き、とある有名なミュージシャンは「もうロンドンには住みたくない、静かだった慣れ親しんだ街は消えてしまった。」と発言しています。

更にロンドンは外国人ばかりだと言われていましたが、近年ますますその割合が増えました。街を歩きバスや電車に乗れば、聞こえてくるのは英語ばかりではありません。

EU圏内からの人ばかりではなく、あらゆる国から人が押し寄せ、彼らの宗教施設を建てたり、地域によっては移民のコミュニティが広がりすぎて街全体に彼らの母国語の看板が溢れ、一瞬ここはイギリスではないのではと錯覚してしまうことすらあります。

学校では英語が話せない子供たちが問題になる程の状況に、イギリスの人々の中には疲れを感じている方も多いのではないでしょうか。

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離脱派の中心、英国独立党のファラージ党首までもが辞意を表明

筆者はイギリスに、オランダ国籍を持つ夫と暮らして10年になります。イギリスの永住権もあります。私たちを寛容に受け入れてくださり、仕事や生活をさせて頂けるイギリスに、とても感謝しています。

最初こそ不便なイギリスの生活に悪態をついたりもしましたが、嫌であるなら私が日本に帰るべきだと今は思います。イギリスの方々には彼らのルールに伝統があります、それを尊重しないで住まわせてもらうのはおかしいと常に思っています。

ですが、皆がそうだというわけではないかもしれません。不法に盗難した携帯を道で売りさばいたり、公園などに集団で寝泊まりし占拠したり、さまざまな国から流れてくる人々の中にはトラブルを持ち込む人も少なくないのです。

EU圏内だけの話ではなくなりますが、イギリスがどんどん占領されていく様子に我慢ができなくなった人々は多いのではないでしょうか。

離脱が決まってから、残留派だったスコットランド民族党に見るように、 スコットランドがイギリスから独立を希望しているようなニュースが流れたり、オランダは結果にショックで同じ国民投票をしたいとコメント。EU離脱についてイギリスで再投票を行うべきだと言う声があがったり、混乱は強まる一方。

皮肉なことには、離脱派の中心だった英国独立党のファラージ党首までもが辞意表明をしたことです。あれだけ離脱を進めていた彼が、これから離脱派の仕事があると言うのに、じゃあ後は宜しくというその姿勢に、皆が混乱しています。

筆者の周りでも、EUの国籍所持者でイギリスで働く友人たちは、皆が慌てて(資格がある人は)永住権を申請にむけて動いています。私たちも夫がオランダ国籍ですから、どうなることか、もうすでに大混雑でしょうから早めに申請をしなければなりません。

今後、イギリスがどのように改革していくのか、今すぐに全てが一気に変わる訳ではありませんし、EUにも交渉する期間や権利がありますから何がどうなるのか全くわかりません。

ですが、イギリスの方々にとって、納得のいく、より良い国への始めの一歩であれば良いなと願ってやみません。

まとめ

いかがでしたか、お役にたてましたら嬉しく思います。
皆様の留学生活を心から応援しています。

Have a lovely summer day!

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