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「詞のもつ魅力を伝えたい」イギリスの『風景』から掴んだチャンスーーランカスター大学の留学体験者にインタビュー
日本の大学で学部生、修士課程を修了し、留学経験ゼロからイギリスのランカスター大学で4年間の博士課程に挑戦することを選んだ杉本瞳さん。長い間イギリスの詞の世界に魅せられてきた彼女は、どのようにこの留学のチャンスをつかみ、何を得ようとしているのでしょうか。
今回の留学経験者インタビューは、イギリスのランカスター大学にて留学中の「杉本瞳(すぎもとひとみ)」さん。お茶の水女子大学文教育学部言語文化学科修士課程修了後、2015年9月からイギリスに渡り、現在は博士後期課程1年生として留学中。
そんな彼女の留学体験を3回にわたってご紹介。第3回の今回は、杉本さんが追究する「風景」の魅力、そして彼女が追い求める将来について、ご紹介します。
留学経験ゼロからの4年間留学。そのきっかけとは?
(↑左が杉本瞳さん)
ーー 留学を決めたきっかけは何でしたか?
私は将来、最終的に大学の教員になりたいと思っています。私の研究分野は英文学なんですけど、大学で就職をしようと思ったときに、博士号をもっていることはとても有利な重要事項になるんです。それはもちろん日本でも取れるんですけど、若い世代になってくるにつれて、その分野に適した大学、つまり私ならイギリスの大学で博士号を取るっていうのがとても重要になっています。
早い人は修士号、学部生のうちに留学する人もいるんですけど、私はしなかったので、いつか留学したいとはずっと思っていました。ちょうどいろいろなタイミングもあって、せっかくなのでイギリスで博士号取得しようかなと思って。将来の為にも、経験を積もうと。学部留学だと授業の単位は取れて卒業もできるけど、修士、博士は取れないので。
ーー 最終的に留学を決めた決定打はあったんでしょうか?
学部生の時は、夏休みなど普通にバイトとかに時間を使ってしまい、短期留学も行けなかったのであんまり学部の時は本格的に考えてなくて。修士課程のときも日本の大学が好きでしたし…。どこかで留学したいとはずっと思ってたんですけど。
それでちょうど修士から博士課程に変わるタイミングで、 日本学生支援機構「JASSO」 の奨学金で、大学院で留学したい人向けの募集があることを先生から教えてもらって。今のタイミングかなと。
ーー 留学経験ナシからの4年間留学は勇気が必要だったのでは?
たしかに不安はありますけど、ランカスター大学は先生なり、学生、先輩なりすごいサポートが整っている大学で、ものすごく親身になってくれる先生が多いです。そういう意味では精神的に落ち着いているほうだと思いますね。
留学は常に挑戦。でも人と比べることはない。
ーー 素晴らしい環境で研究を順調に進めているようですが、何か大きなことに挑戦した、困難を乗り越えたような経験はありますか?
いつも挑戦みたいな感じですね。英語できるほうじゃないので、イギリス人と交流することは難しいことも多いですし…特に北部のしゃべり方は聞き取りにくくて、苦労することもあります。でも、「分かんなきゃ聴きゃいいんだよ」って言ってもらえます。
研究の方もいつも順調に進むわけではないんですよ。「なんか書けない」とか「いいアイデアでないな」とか。でもとりあえずやる。諦めずにやればいつか分かるんじゃないかと思って。あとはいろんな人に聞いて相談して、一人で抱えないようにしていますね。
留学してる私にとって、言語的に困難なことはたくさんあっても、それって、現地の学生と比べることって意味ないと思うんです。出発地点から違いますから。安易に人と比べて劣等感もったり惨めな気持ちになることはないと思うんです。日本人だから分かることもあると思ったり、なるべく周りもその気持ちを尊重してくれるんで、みんな自信をもってやればいいと思います。
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「風景」に注目し、歌を楽しむように、詩を楽しみたい
ーー 日本の大学の教員になりたいとのことですが、何か理由があるんですか?
イギリス文学をやる学生って今、あまり多くないじゃないですか、私が今やってるのがイギリスの「風景」に関する研究なんですけど、18、19世紀の詞を見たりしてるんですね。詞って、今の時代みんなあんまり読まないじゃないですか。でも歌はみんな好きですよね。歌詞を読むのが好きな人も多いと思うんです。それと同じように、身近に詩を評価できたり、詩の面白さをみんなと楽しめたらいいなと思っていて。そういう意味でも日本で何かできたらいいなと考えています。
ーー ぜひとも杉本さんの授業、受けたいです!
あああ勉強しなきゃー!!(笑)
でもほんとそれ(日本で詞のもつ魅力を伝えたい、という気持ち)はずっと思ってて…。歌の歌詞と、文学作品の詩は違うかもしれないんですけど、そっちの面白さも一緒に楽しめたらいいなと思って。
詞に興味があったのは昔からで、イギリスに興味を持ち始めたのは、学部生からです。18、19世紀から初めて「風景」をメインテーマにしていろいろな作品が生まれるようになったのが面白いなと思って。人はどのように「風景」に目を向け始めたのか。今も人々は環境に対して関心が高いと思います。だから今、18世紀から見直すことで「風景」から何か面白さや、大事なことに気が付けるんじゃないかなって。
ーー その「大事なこと」って、具体的にどんな発見のことでしょうか。
私が今やりたいと思っているのが、「風景」とその人のアイデンティティがどう関係しているのか。例えばどういうときに自分は日本人だって思うか、その地域の人だって思うのかって、色々な要因があると思うんですけど、「風景」ってひとつ大きなものだと思ってて。風景を見ると「あ、私ここの人だな」って思ったり、「自分らしさ」みたいなものが分かったりすると思うんですよ。
イギリスって、食べ物にイギリスらしさってそんなには、日本の和食ほどにはないと思うんです。歩いていても、周りにある店は中華料理、インド料理とか各国のレストランはたくさんあるんですけど、イギリス料理がメインでくることあんまりないんです。それよりも、風景や地域に、それこそ湖水地方をどう見るかっていうのに、イギリス人らしさや地域の良さっていうのが分かってくるんじゃないかなと思うんです。
ーー やはり湖水地方はイギリス人のアイデンティティに深く関わっているということでしょうか?
そうですね。「ナショナルトラスト」って聞いたことありますか?ピーターラビットの作者が中心となって19世紀くらいから始めた活動で、湖水地方の美しい景観を守っていこうっていう運動です。景観を保つっていうのは、地域らしさを保つってことでもあるし、イギリスの文化として育てていこうっていうこと。やはり湖水地方はイギリスにとって大きなものだと思いますね。
ーー では湖水地方をメインに博士論文を書いていくんですね?
そうですね、最初は違うイギリスの地域から初めて、最後に湖水地方をもってこようと思っています。どういうことやるか、最初の方の内容は初年度に決めて、それ以降はそれをもとに文量を増やしていって、大きい一個の論文を完成させるって感じですね。
そしてこれから
ーー では博士課程修了後のキャリアプランについて聞かせてください。
いきなり正規の教員になるのは難しいかもしれないんですが、非常勤講師のような形で初めて、募集があれば行けるところに応募を出していこうと思ってます。私はここの地域じゃないと嫌ってことはないので。どこ行っても楽しそうじゃないですか、行ったことないから。イギリス一回行ったら、もうどこへでも。なので留学中にこっちでイギリスの良いところを身につけて、日本に帰りたいなと思っています。
ーー では最後に、読者にメッセージをお願いします!
そもそも私が今まで留学をしなかったのは、なかなか一歩踏み出せなかったからだと思うんです。いろいろ理由はあったんですけど、周りが勧めてくれるタイミングとか。でも、チャンスが今来たなって思ったときには、突っ込むのが良いと思いますね。
いろいろ金銭面、学力、英語に関して心配している人は多いですけど、何とかなるし、周りの友達見てても最終的にはみんな最初は大変だけど乗り越えている人多いので、飛び込んでみればいいと思います。私も今まで留学したことはなかったけどとりあえず博士課程なんとかやれています。
最初からできるできない決めずに、ある程度来てから先生や先輩に相談したりして、できそうかできまいか、ある程度向うの判断に任せてみればいいと思います。自分であんまり決め過ぎずに、オープンな感じで来てしまえばいいんじゃないかなとは思いますね。きっと楽しいことたくさんあると思うので、踏み出してほしいと思います。
まとめ
自分の興味をもった分野、自分の研究に対して常に一生懸命で、いろんな人との出会いを大切にしてきた杉本さんだからこそ、最終的に留学というチャンス、タイミングを掴めたのだと思います。イギリスの詞がもつ魅力と風景との関係性を、とてもいきいきと語ってくださる杉本さんから、人生のチャンスを掴むために大切なことを学ぶことができました。
今回紹介したランカスター大学の口コミ
名称 | Lancaster University(ランカスター大学) |
---|---|
国・都市 | イギリス / イングランド / ランカスター |
学校形態 | 大学 大学院 |
住所 | Bailrigg, Lancaster, Lancashire LA1 4YW イギリス |
電話番号 | +44 1524 65201 |
公式サイト | http://www.lancaster.ac.uk/ |
口コミサイト | https://ablogg.jp/school/6617/ |
インタビュアー
佐藤果歩(さとうかほ)/早稲田大学3年/アブログインターン生