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差別や不公平と戦うソーシャルワーカーに!ーーテキサス大学の留学経験者インタビュー

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アメリカ・テキサス大学でソーシャルワークを学ぶ日本人留学生にインタビュー。多様な人種に溢れるテキサス大学の様子と、差別や不当をなくすための学問ソーシャルワークについて伺いました。

今回の留学経験者インタビューは、アメリカ・テキサス大学に留学している「植木雅美(うえきまさみ)」さん。現在、テキサス大学アーリントン校でソーシャルワークを学んでいる大学院生です。そんな植木さんのアメリカ留学について3回に分けてご紹介します。

第2回の今回は、「テキサス大学」と「ソーシャルワーク」について伺いました。

テキサス大学の基本情報

テキサス大学はオースティン校、ダラス校など全部で八校を傘下に持つ。アーリントン校の学生数は3万人にも及ぶ大規模な州立大学。

Ethnicityに溢れるテキサス大学アーリントン校

ーー テキサス大学はどういう大学ですか?

たくさんのEthnicity(エスニシティ)に溢れている学校です。人種が多様な大学ランキングみたいなので上位になってました。白人、アフリカンアメリカン、ヒスパニック系、アフリカ人が特に多いです。

アジア人は少数派ですが、その中でも特にインド人とベトナム人が多いようです。今のところ私が取った大学院の授業には私を含めて中国人の留学生と二人しかアジア人がいませんが、他の専攻や学部にはもっと他にもアジア人がいます。インド人はほぼエンジニア専攻で、知り合いのインド人はアメリカ人の友達が作りたいのに、クラスがインド人で埋まっていて、機会がないと嘆いていました(笑)。

ーー 日本人はあまりいないんですね。

わずかですが日本人学生もいるみたいです。 車で30分のところにあるダラスに行くともう少しいるみたいですけど。 最初アメリカに来たときは、一年間だけの滞在を予定していたので、日本人と話さないようにしてました。英語力をつけることに集中したかったので。 でもたまに日本人の友達と話すときには、気配りが出来たり空気が読めるので居心地は良かったですね。

ーー 日本が恋しいと思うことはありますか?

今は勉強で精一杯です。それに、いざとなればスマホやスカイプなどで繋がれるので大丈夫です。

日本に関して恋しいのはコンビニですね。こっちでも、何でも揃うコンビニがあったらなぁと思います。手軽に菓子パンとかパックジュース、おにぎりを買えるので。アメリカでは大体全部ビッグサイズで日本人にとって手軽な物はなかなか売ってないです。

ーー テキサス大学に自慢できる施設はありますか?

無料で使えるスポーツセンターと24時間開いてる図書館があります。図書館は金曜と土曜以外は24時間開いてて、徹夜で勉強している人も結構多いです。あとは、学生が無料で利用できるスポーツセンター、プラネタリウム、スタジアムなどもあって様々なイベントには事欠かないですし、キャンパス内には寮やアパートもたくさんあります。

あと、テキサス大学には日本に比べて障害者の学生にとっても過ごしやすい環境が整っていると思います。バスや電車も車いすの人が利用しやすいし、学内の施設はほぼバリアフリーで、障害者専用のプログラムもあります。なので、障害者の方たちにもどんどんアメリカ留学してほしいと思います。テキサス大学には車いすでバスケをする学生チームが大活躍していてカッコイイです。特に男子は全米一位を7回も取ったという輝かしい成績を残しています。

ーー どのような人にテキサス大学をお勧めしたいですか?

アーリントン校のソーシャルワークは、ある学生の口コミランキングサイトでは第3位になっていて周りからも良い評判を聞きます。ソーシャルワークに興味がある人で、日本人がいない環境に身を置きたい人には良いかと思います。エンジニア学科も人気みたいです。教授もクラスメイトもやる気があります。

公共交通機関がないアーリントン

ーー 大学の周りの環境はどうですか?

交通に関しては、アーリントンは公共交通機関のない都市のなかで全米一大きいです。地元の人も車がないと地獄だと言っています。私も引っ越してきてから10か月は車がなくて学校の付近1マイル以内に制限された生活で、買い物はUber(車を登録した一般人が行う送迎サービス)で行くか、友人に乗せてもらったりしていました。

でも、外まで行かなくても大学の中に食べ放題式のカフェテリアやファストフードが食べられるフードコートがあるので、そんなに困らないです。大学のキャンパスにはスタバもありますし。ただ外食を楽しみたかったり、食材や生活用品を買いに行くとなると車を持っている友人に乗せて行ってもらうか、大学が週に1回出してくれるシャトルバスでショッピングモールを利用することになります。

ーー 治安はどうですか?

治安は、ものすごく悪いわけではないですが、銃を保持しての恐喝事件やレイプが起きたことはあります。まあアメリカは銃社会ですし、基本的に夜は歩かないようにしています。

あとは、学内をシャトルバスが回っているのでそれを利用したり、セキュリティーガードの人がカートで送り迎えをしてくれるサービスがあるので、それを利用しています。

ーー 生活費の面ではどうですか?

家賃に関しては比較的安いです。土地の値段が高くないので。カリフォルニアとかのベイエリアに行ったらめちゃくちゃ高いですけどね。学生はどこでもアパートをシェアしてルームメイトを持って住んでいることが多いです。

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世界の差別、格差の解決を追求するソーシャルワーク

ーー 大学ではどのような学問を学んでいるんですか?

大学ではソーシャルワークを学んでいます。ソーシャルワークは日本とアメリカでは概念が違い、アメリカでは専門職です。

日本の社会福祉というと主に高齢者や児童、障害者に対するケアというイメージがありますが、アメリカのソーシャルワークはそれらを包括して社会を改善するために働きます。ヘルスケア全般、高齢者支援、薬物乱用と精神衛生など様々です。公共政策の専門家として活躍するソーシャルワーカーたちもいるし、権利擁護に力を入れる人もいます。

ーー ソーシャルワークを学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

今の世の中では、差別撲滅や男女平等を訴える運動が多くあります。にも関わらず、まだ身分や個人の能力などを理由に貧困や差別などにあっている人々を目の当たりにしていると、困っている人たちの支援に力を注ぎたいと強く思うようになりました。

そしてソーシャルワークを勉強しようと思った前に、出会った心理学の教授がサイコセラピストで、その先生のおかげで私もセラピストになりたいって思いました。クラスで知り合った友人たちもみな何かしら人の役に立ちたいとセラピストを目指してました。

同じような意識と目標を持つ仲間を持ったことで、はっきりと自分はどうしていきたいのかを考えるようになり、心理学でできることとソーシャルワークでできることを比べて、ソーシャルワークを選びました。差別やハラスメントといった問題だけでなく、貧困層と富裕層の教育レベルの差、ワーキングプアと付随する問題、日常生活で起こる精神的なストレスなど、社会経済的な理由に伴う諸問題の解決や、それに悩む人たちの生活の質の向上に努めるソーシャルワーカーに惹かれました。

私自身も日本とアメリカ両方で差別やハラスメントを受けて生きにくい思いをし、強いストレスから心身を病んでセラピーやカウンセリングを受けてサイコセラピー自体に興味を持ったのも大きかったです。セラピーやカウンセリングというと日本では精神を病んだ人だけが利用するものだという認識がまだ強いかもしれません。ですが、アメリカでは誰でも結構気軽に行けるものですし、セラピーは生きていくうえで抱える悩みを解決するために様々な場所や場面で利用されてます。

ーー テキサス大学でのソーシャルワークはどんな感じですか?

テキサス大学院のプログラムは順調にいくと2~3年で修了でき、1年目は基礎を身につけ2年目は専門的技術を学んでいきます。ミクロ実習とマクロ実習にわかれ、さらにミクロは高齢者支援専門、家族・児童支援専門など4つに分かれているので5つの専門から1つを特化して学ぶことになります。

1年目と2年目にはそれぞれ実習としてインターンがあります。1年目はホームレスのシェルター、ホスピス、外来専門クリニック、更生施設など地域の色んな施設に配属され、2年目は自分の専門の特化に関するエージェンシーを選んで行きます。もちろん無償で行います。私は今2年目で隣の市にある総合病院に行くことになりました。院のカリキュラムだとしても、Emailから面接まで全て自分で配属先であるエージェンシーとコンタクトを取らなければならないので、大変です。

アメリカでは、ソーシャルワークはミクロレベルとマクロレベルに分かれます。ミクロレベルでは 、学校や病院など様々な施設でカウンセリングなどの福祉サービスをします。マクロレベルでは、政府や地域行政に働きかけて人々の権利や地域社会の生活の質を全体的に向上していきます。

私は、人と直接関わりたいのでカウンセリングやケースマネージメントが出来るミクロレベルで働くつもりです。しかし、いくら個人的に支援しても地域や国の政策が変わらなければ意味がないので、マクロレベルでの勉強も力を入れています。例えば、汚れた川をイメージしてみてください。川の水質を良くしようと思うなら下流の掃除だけしても仕方がないですよね。上流で起こっている工場の廃棄汚染の改善に取り組まなければ意味がありません。

ーー ソーシャルワークの授業で何か印象に残っていることはありますか?

「言われた仕事をするだけではなく、ソーシャルワーカーは民衆の生活の向上のために常に疑問を持ち、政府を動かすのが君たちの役目でもあるんだよ。」と、公共政策のクラスで言っていた教授の言葉が印象に残っています。それは、どんな現象が地域社会で起こってどんな問題を引き起しているのか、社会問題をクリティカルに考え、声を出せない人たちのために不正や不公平に対して代表して声を上げていきなさいということです。

LGBTQの人の幸せを守りたい

ーー ソーシャルワークには様々な分野があるとのことですが、植木さんはどういった分野に興味があるんですか?

 

様々なマイノリティー、特にLGBTQの支援に興味があります。例えば、同性婚が、いつか同性愛だと強調することがなくなればと思います。社会選択のひとつに結婚がありますが、「愛し合う人同士が結婚する」選択は、日本ではまだ異性愛者たちだけの権利ですよね。マジョリティー(異性愛者)は自分たちだけがその権利を持っていることに気付きにくいですけど、その当たり前にできることが出来ない人たちがいるのです。

同性婚が認められたアメリカでも、まだ自分のアイデンティティも公にできない人たちがいる地域はあります。産まれた家庭の宗教上の理由や保守的な地域に住んでいてカミングアウトできない人たちもたくさんいます。言えば、差別やイジメ、暴力を受ける可能性があるからです。

カリフォルニアでLGBTQをサポートするNGOでボランティアしていたときに、ロシアやブラジルから亡命してきた人々と知り合いました。彼らの祖国では暴力や反LGBT法により命の危険があるというのです。私自身は異性愛者で、そういうことを知らずにのうのうと生きてきました。しかし、自分はLGBTQの人々を虐げている社会や文化の一部であると考え始め、問題解決の責任を感じるようになりました。ジェンダーは、世間で言われる男と女以外にもたくさんあることを意識し始めました。

互いに尊重し合い、認め合って暮らせる社会作り

ーー 具体的にどういう社会を築いていきたいと考えていますか?

これから日本でもジェンダーフリーは増えてくるでしょうし、人種多様化と同様に性の多様化にも対応できる社会を作らなくてはいけません。私は決してお金持ちでなくても衣食住に困らない家庭で育ちました。でも、世の中にはそれがかなわない人、性的マイノリティや障害者であるために生きづらい思いをしている人がいる。アメリカに来てそれらを意識し直したときに、私には責任があると気づいたんです。

私たちは共に社会生活をする共同体として、互いを尊重し合う責任があると思います。勉強しても、努力しても、お互いの違いを理解し合えないこともあります。人を理解するのは簡単ではありません。まだ障害者は劣っている、同性愛者はアブノーマルというようなイメージがついてまわるのが今の社会です。みなそれぞれ宗教上や個人的な意見から受け入れられないことも多々あるでしょう。

もちろん理解し合えることが一番ですが、それを理解できなくてもいいんです。違いがあることを認識し存在を認めることが大事だと思います。誰でも世間から認められたい、分かってもらいたい、求められたい欲求は同じです。私はソーシャルワーカーとしても一個人としても、みんなが認め合って安心して暮らせる社会作りに貢献していきたいです。

まとめ

今回は「テキサス大学」と「ソーシャルワーク」 についてお聞きしました。テキサス大学には多くの人種がいるそうです。多様な人種がたくさん集まると、何かと人種間の問題が生じます。植木さんは、そうした差別などの問題を解決することを試みるソーシャルワークを学んでいます。誰もが安心して暮らせる社会を作ることこそ、植木さんの夢です。その素晴らしい志に感服するばかりでした。

さて、次回は植木さんの「留学後のプラン」についてご紹介します!

今回紹介したテキサス大学アーリントン校の口コミ

名称 University of Texas at Arlington(テキサス大学アーリントン校)
国・都市 アメリカ  / テキサス州  / アーリントン
学校形態 大学 大学院
住所 701 S Nedderman Dr, Arlington, TX 76019 アメリカ合衆国
電話番号 +1 817-272-2011
公式サイト http://www.uta.edu
口コミサイト https://ablogg.jp/school/10274/

インタビュアー

保坂福斗(ほさかふくと) / 早稲田大学一年 / アブログインターン生

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